朝ラッシュ電車本数、10年でどれだけ変わった? 「早朝シフト」と急行などの増発がトレンド

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最後に、朝の列車本数が大幅に減った鉄道会社を紹介する。東武鉄道である。10年前に比べ、東武スカイツリーラインでは各駅停車を中心に12本もの減便がなされ、ピーク1時間に限ってみると3本の減便となっている。

東上線では各駅停車4本、急行系5本の計9本もの減便が断行された。こちらはピーク1時間の本数は減っていないが、混雑率は146%から137%に落ちている。どちらもピーク前後、特にピーク後の9時台の減便が著しい。

これは利用者の減少が大きな要因となっているようである。国土交通省のデータによると、2008年度の東武スカイツリーライン小菅―北千住間のピーク1時間あたりの利用者数は7万1531人だったのに対し、2017年度は6万7669人と約4000人減少している。東上線では2008年度4万8261人に対し、2017年度は4万5537人と約3000人の減少だ。

だが、東武鉄道の輸送人員自体はこの10年間で増えている。2008年度の輸送人員は定期客が5億7103万人、定期外が3億665万人だったが、2017年度は定期客が5億9933万人、定期外が3億2114万人まで増えた。関東交通広告協議会の統計によると、東武スカイツリーライン、東上線ともに定期券利用者数はこの10年で約3万5000人増えている。

ということは、一番混雑する時間・区間の需要が減り、ほかの時間帯や区間・方面で増えているということであり、経営上は理想的な方向へ向いているようである。

通勤時間の分散は進んでいる

最近の通勤電車のトレンドは

①早朝時間帯の増発
②早朝の各駅停車の急行化
③混雑の激しい線区では快速の各駅停車化

この3点に力を入れている鉄道会社が多くなってきているようである。

筆者の過去の記事に対するコメントの中で最も多かったのは「みんなでピーク1時間に集中するなんていうことをいつまで続けるのか」といった内容のものであった。

確かにこんなにも情報化社会が進んでいるにもかかわらず、通勤時間の分散もロクにできないとすれば、文明社会として相当に遅れていると言われても仕方がないと筆者も思う。そんな声がいま、鉄道会社の施策に反映され始めている。

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