村上ファンドはなぜ「廣済堂」に目をつけたのか

葬祭子会社「東京博善」の知られざる企業価値

こうした複雑な沿革ゆえか、東京博善の株主総数は2018年3月末時点で379人と多い。廣済堂が2月12日に開示したTOBに関するFAQによれば、株主の大半は寺院関係者だという。

政財界に広範かつ強力なコネクションを持つ櫻井文雄氏が、同社の経営に関与するようになったのは1984年2月のことだった。1985年に社長に就任すると、6カ所の斎場の近代化に着手。2000年までに建て替えを完了させた。

印刷会社として出発した廣済堂は、1970年代から1980年代にかけ、不動産開発やゴルフ場経営、出版業を手がける産報グループや、クラウンガスライター、ボールペン製造のビック、西ドイツの日本料理レストランであるドイツ日本館などを相次いで買収。クラウンガスライターの関係で、プロ野球団クラウンライターライオンズ(後の西武ライオンズ)の親会社だった時期もある。

だが、バブル崩壊後は事業規模を徐々に縮小。ゴルフ場の売却を完了したのは、櫻井氏死去から8年4カ月後の2013年3月である。

改築した四ツ木斎場減損の可能性も

この間に廣済堂本体の収益力は低下の一途をたどり、2006年3月期以降は連結における葬祭事業(=東京博善)のセグメント営業利益が、その他のセグメント利益を上回る状況が続いている。

2月12日公表のFAQでは、四ツ木斎場で減損が発生する可能性について触れている。死亡人口は2040年ごろに現在の1.3倍近い数のピークを迎えるが、単独世帯の増加や葬儀の簡素化も進んでいて、葬儀単価は下落傾向にある。120億円を投じてリニューアルした四ツ木斎場の収益改善も課題になっているというのだ。

2016年12月に建て替えを完了させた四ツ木斎場の損益は、減価償却負担が重く、2019年3月期上期時点で1億4147万円の赤字だったが、キャッシュフローは1億8722万円の黒字。売上高も2019年3月期上期は前年同期比6.3%増の6億1597万円で、減損発生の可能性を示唆されても実感は湧かない。

ベインキャピタルがTOBを開始する前に応募契約を締結しているのは、12.4%を保有する澤田ホールディングスのみ。それも取締役会の承認を条件としており、応募を確約しているわけではない。櫻井文雄氏から廣済堂株を相続し、2018年9月末時点で9.69%を保有する文雄氏の妻・美江氏は応募契約を締結しておらず、2月18日に反対を表明した。

3月1日の公開買付期間終了まであと10日。レノはいつ動くのか。市場の視線がその1点に集中していることは間違いない。

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