福岡発・障害者が「のびのび働く職場」に潜入 障害者雇用率が20%以上の物流センター

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一緒に働くスタッフはどう捉えているのだろう。

「これだけ人数が増えると、一緒にいるのが当たり前になり、みんな自然に応援しています。現場のリーダーからは、もっと採用してほしいという声もあるくらい。障害者は仕事ができるというイメージが強く、実際に仕事がはやくてミスが少ない。実習から立ち上がりがとてもはやいんです。

1週間でその現場の平均値をクリアして、3週間あればトップクラス入り。やはり先輩の存在やアドバイスが重要で、あの先輩がこれだけやっているから自分もできると思えるのでしょう。会社としては福祉的な考えではなく、彼らがとても優秀で大切な戦力だから採用しています」

福岡物流センターは、障害者の法定雇用率を優に超えている。それでも採用を続けるのは、彼らが優秀だから。「働いている本人たちに『ここは差別がない会社』とよく言ってもらえるのがうれしい。ただ、裏を返すと、一歩外に出ればそれだけ差別を感じる社会なのでしょう」と坂井さんはしみじみ話す。

「このセンター業務には知的障害者の特性がマッチしました。どんな会社や仕事でも同じようにできるとは思いません。障害者雇用を考えるなら、まずはどんな仕事を任せたいか業務を切り出して、特別支援学校や就労移行支援事業所などに見学に行くことをおすすめします。当事者に会えば、必ずヒントがありますから」

人材育成や未来の働き方のヒントがある

取材の後、センターを案内してもらった。広いセンターでは若者や外国人、女性など、多様な人たちが作業服を着てテキパキと動いている。

ASKUL LOGISTはダイバーシティの取り組みを進めており、障害者をはじめ、留学生や子育て・介護中の女性も多いという。

入社1年目の小池一輝さんは、ピッキングを担当している。

楽しそうに働く小池さん。センターでは障害の有無にかかわらず、同じ制服で同じ仕事をしている(筆者撮影)

「いくつかの会社を見学しましたが、ここは説明がわかりやすくて、ぜひ働きたいと思いました。

初めは数をミスすることもあったけれど、みんな優しくて仕事が楽しく、休みたいと思ったことはありません。お給料で弟にお小遣いをあげました」と明るく話す。

仕事でいちばん楽しいことを問うと「留学生と働くのが面白い」と即答。

留学生と障害者の相性がよく、双方から楽しいという声をよく聞くのだそう。

この現場には障害者雇用のみならず、人材育成や未来の働き方について、たくさんのヒントがあると感じた。

佐々木 恵美 フリーライター・エディター

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ささき えみ / Emi Sasaki

福岡市出身。九州大学教育学部を卒業後、ロンドン・東京・福岡にて、女性誌や新聞、Web、国連や行政機関の報告書などの制作に携わる。特にインタビューが好きで、著名人や経営者をはじめ、様々な人たちを取材。

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