「不況増殖運動」を止めるため政治の力で公務員改革を!--堺屋太一・作家

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「不況増殖運動」を止めるため政治の力で公務員改革を!--堺屋太一・作家

--米国発の金融危機から世界大不況が起こっていますが、今後の見通しは。

金融危機そのものは2008年いっぱいで止まると、私は考えています。しかし、09年は実体経済が激しく落ち込むでしょう。

金融危機から始まり、貸し渋り、貸し剥がしから実体経済の悪化につながったという点で、今回の金融危機は1998年の日本と似ています。当時、私は経済企画庁長官として、対策の総指揮に当たりました。7月末の就任から3カ月は、金融機関の不良債権問題に全力を挙げました。金融機関の資産内容を洗い直し、不良債権を確定。不良銀行は国有化する一方、健全な金融機関にも公的資金を注入しました。不良債権は、整理回収機構と産業再生機構とに振り分けて処理しました。

そのあとは不況対策です。98年11月に大規模な補正予算を組みました。その反応が比較的早く現れ、12月の月例報告では「変化の胎動が見られる」として、国民の皆さんを勇気づけることができました。

ただ、当時と今回と大きく違う点もあります。規模、速度、そして国際性です。今回は国際的なデリバティブが入り組んでいて、評価が非常に難しい。危機のスピードが速いのも今回の特徴です。ベアー・スターンズ破綻が08年3月。その6カ月後にリーマンが倒れました。瞬間的に、金融危機は世界中に拡大し、一国の政府だけでは調査できない状況です。

そうした中で、各国政府は、すでに不況対策に乗り出しています。

中国については、09年中にも景気は回復に向かうと見ています。というのも、中国の不況はどの国でも経験する初期的調整段階だからです。日本は65年、韓国は83年、タイやマレーシアは97年のアジア通貨危機でそれを経験しました。いずれも景気の谷は深かったものの、不況は1年で終わりました。

問題は米国です。米国は「ペーパーマネー体制」の末期にあります。ペーパーマネー体制は、71年の金ドル兌換の停止から始まり、レーガン大統領時代のレーガノミックスで本格化しました。そこでは、国際収支と財政の「双子の赤字」は恐れる必要がないとされました。ドルが暴落し基軸通貨の地位が危うくなるという批判もありましたが、実際にはそうはなっていません。

ペーパーマネー体制が拡大した背景には「知価革命」があります。近代工業社会では、物財が豊かなことが幸せでした。最初に一所懸命働いておカネを貯め、利子を稼ぎながら、物財の豊かさを追求する。そうしたライフサイクルが、幸せをもたらすとされてきました。

しかし、80年代以降、物財という客観的なものよりも、満足という主観的なものこそが幸せの尺度ではないか、という見直しが起こりました。生涯に獲得する物財が本来の10から7に減ったとしても、いま借金しても欲しいものを手に入れたほうが満足度が高く、幸せであるという価値観への転換です。これがペーパーマネー体制に拍車をかけ、米国の貯蓄率を低下させたのです。

現在、このペーパーマネー体制が立ち行かなくなりました。今後は、借金よりも返済のほうが多くなります。その結果、米国の国際収支の赤字は減少する一方、世界に不況がまき散らされることになります。

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