「不況増殖運動」を止めるため政治の力で公務員改革を!--堺屋太一・作家
--日本企業への影響は。
日本でも、輸出型企業は業績悪化が深刻化します。一方で、輸入が多く円高メリットを受けられる企業には追い風ともいえます。09年は、企業業績の二極化が進むでしょう。
今、日本企業にとって重要なことは二つあります。一つは、国内外を問わずいちばん安い原材料、部品などを上手に組み合わせ、日本や欧米のマーケットで通用する製品を作ること。もう一つは、団塊世代を中心とする定年退職者後の層をうまく活用することです。これらができる企業は業績を上げられるでしょう。
ところが、いま日本では大問題が起こっています。それは官僚が主導する「不況増殖運動」です。これを誰が、どうやって止めるか、経済界も真剣に考えなければなりません。
98年の金融危機当時に行った改革の多くが、元に戻りつつあります。99年の通常国会では、会社法改正による株式交換・株式移転制度の導入、労働者派遣の対象業務拡大など、多くの改革法案を成立させました。改革気運を盛り上げるため、大学の一芸入学など学校選択の自由を促進したり、成人年齢の18歳への引き下げを議論したりもしました。
現在、こうした改革に逆行する動きが横行しています。ブルドックソースの買収防衛策をめぐる最高裁判決や、旧カネボウの少数株主への損害賠償を認めた高裁判決など、時代感覚がずれています。米国のニューディール時代(30年代)、最高裁だけが頑迷で、いくつかの政策に違憲判決を出したことを連想させます。
官僚もひどいものです。たとえば、10年前には医師不足はなかった。行政の介入で医師不足をつくった点も見逃せません。建築基準法にしても、少数の犯罪者のために制度そのものを変えてしまい、官僚発の建築不況をもたらしました。
金融商品取引法も、過大な説明責任を販売者に押し付けています。パチンコ規制もおかしい。射幸心をあおるといって規制しながら、サッカーくじのほうは文部科学省が所管するせいか猛烈に射幸化しています。官僚は、各府省の縦割りの官僚集団の立場しか考えていません。
--まさに「官製不況」ですね。
世界同時不況の中で、日本は比較的恵まれています。円高好況の可能性さえあります。しかし、それを実現するためには、官僚が引き起こした「不況増殖運動」を止めなければならない。その突破口となるのが公務員改革です。
政治家が責任を持って行政を指導できる体制を、いかにつくるか。官僚が政治家を使いまくっているようでは、日本経済はよくなりません。
さかいや・たいち
1935年、大阪市生まれ。60年東京大学経済学部卒業、通商産業省(現経済産業省)入省。大阪万博や沖縄観光開発などを手掛け、78年退官。98~2000年に経済企画庁長官。著書は『油断!』『団塊の世代』『知価革命』『世界を創った男 チンギス・ハン』など多数。
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