乱れ飛ぶ販売奨励金、激安携帯電話復活のウラ側

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「身銭切って奨励金」でも年末商戦は2割減

実は併売店は今、通信事業者に加えて販売代理店からも大額の奨励金を受け取っており、これが激安端末のもうひとつの原資となっている。代理店独自の奨励金は以前からあったが、今夏以降、NECやパナソニック、富士通といった端末メーカーの子会社である販売代理店が奨励金の急拡大に踏み切っている例が目立つという。

「身銭を切って奨励金を併売店に出している」「これまで積み上げてきた利益を吐き出しているようなものだ」--。メーカー系代理店関係者は口をそろえて打ち明ける。市場失速で積み上がった在庫は通信事業者だけでなく、代理店の手元にもあふれている。通信事業者と異なり、代理店が逆ザヤを発生させても在庫を安値でさばこうとするのは、親会社であるメーカーの市場シェア拡大に貢献するためにほかならない。

しぼむ市場、あふれる在庫、終わらぬシェア競争--。こうした悪循環の中で復活したゼロ円端末。だが厳しい景気減速の逆風に遭って消費者への訴求効果は弱く、期待の年末商戦でさえ「足元の販売状況は昨年末の8割程度」(NTTドコモ販売部)。一部の通信事業者は、端末メーカーに発注した生産台数の買い取りをキャンセルするほどだという。従来なら発注量の全量買い取りが商慣習にもかかわらず、だ。かつては市場の成長ドライブとして生まれた激安端末。再来したゼロ円端末は、業界の成長が終焉した中でのあだ花かもしれない。


(杉本りうこ 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済)
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