人工知能の進歩で公平な人材選考は可能だ 急速に進む採用プロセスの迅速化と効率化

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人材採用におけるAIの利用が急速に普及する一方、そのデータ解析用アルゴリズムの監査は後手にまわり、対応が遅れている。

優秀なアルゴリズムには以下の2つの要素を組み込む必要がある。

1)アルゴリズムは分析が可能で、ある結果が導き出された理由が簡単に理解できるよう構築すべきだ。過度に複雑で「ブラックボックス」と化したシステムは分析が非常に困難で、分析も非常に困難になる。
2)企業は自社のAIのアルゴリズムを独立した社外の監査機関に検証させなくてはならない。公平性の高いアルゴリズムを使っていることを証明できれば信頼性が増し、人材採用の競争でも有利な立場に立てるはずだ。

欠陥の報告こそあったが、AIは採用から性別や人種的偏見をなくし、中立性を維持する役に立つかもしれない。監査を行うなど正しく使用されれば、AIは人間よりはるかに公平な判断を下す。

人間には無意識の偏見があり、制御は不可能であり、ほとんどの場合、認識することさえできない。自分が知っていることを好み、自分と同じ長所を重視するのは、人間の本性だ。今でも昔ながらの「推薦」や「紹介」で採用が決まることは非常に多い。ある種の縁故主義がいまだに残っていることは確かだ。

一方、AIシステムの場合は監査によって、人材評価のバイアスや採用決定の理由が明確に提示される。アマゾンのAIツールは非難の対象となったが、AIシステムの欠陥は人間によるミスと違って、識別可能だ。アマゾンの場合、AIツールが特定の単語をもとに履歴書の評価を下げたことが判明した。履歴書を読んだり、面接をした後に、AIと同じ精度で自分の判断を分析できる人間はほとんどいない。

これほど細部にわたって責任が明確になれば、訴訟もほとんど起こされなくなる。偏見がなかったことを証明でき、システムの潜在的な欠陥がいかに改善されてきたかも指摘できる。企業のポリシーも明確な見識に貫かれたものになるべきだ。女性からの応募がこんなに少ないのはなぜか。はったりがきいた言葉が過度に評価されるのはなぜか。こうした傾向を変えるにはどうしたらいいのか。

AIを駆使すれば、企業側は応募者を選択する基準を設定することができる。候補者探しの段階で多様な背景とそれに基づく多様な問題解決のやり方を提供できる人々を重視するという基準設定も可能だ。そのうえで、AIは雇用主の優先度に基づいて提案を行う。

AIシステムを標準装備に

否定的な報告はあるものの、多くの企業が人材採用AIの活用の範囲を広げている。こうした企業は従来の採用モデルが破綻したことに気付いている。従来と同じプロセスで候補者を選び続けるだけでは、最適な人材確保はむずかしい。人材採用部門が時代に追いつくための突破口となる可能性が最も高いのは、AIの技術だ。

AIシステムはまだ自律的に採用を決定できるほどではないかもしれないが、採用プロセスの迅速化、効率化という点では急速に進歩している。募集職種との適合度に基づいてアルゴリズムが割り出す採用候補者のランキングは、人間による書類審査よりも公平で、時間もかからない。

今後も開発が続くAI技術は、本質的に公正なものではなくてはならない。多様性と平等に焦点を合わせたシステムであれば、職場のためになる人材発掘に役立つことはまちがいない。

(文:栗原紀子)

「ニューズウィーク日本版」ウェブ編集部

世界のニュースを独自の切り口で伝える週刊誌『ニューズウィーク日本版』は毎週火曜日発売、そのオフィシャルサイトである「ニューズウィーク日本版サイト」は毎日、国際ニュースとビジネス・カルチャー情報を発信している。CCCメディアハウスが運営。

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