人手不足は「労働条件が酷い」会社の泣き言だ

移民受け入れの前に「賃上げ」を断行せよ

人口が減少するため、表面的な経済成長率はそれほど高くはなりません。しかし、このチャンスをうまくつかむことができれば、国民1人当たりの所得を高め、皆が豊かになり、社会保障制度や国の財政を健全化することも可能です。

「人手不足」は「悪い労働条件」の結果でしかない

しかし、近視眼的な日本の経営者たちは、今の状況がチャンスであることに気づいていないのか、国に対して極めて危険な訴えをしています。

それが、「人手不足」を理由にした安易な外国人労働者の受け入れ枠の拡大です。

そもそも日本は世間で騒がれているほど、本当にひどい人手不足の状況にあるのでしょうか。私はこのこと自体に、非常に強い疑問を抱いています。

人手不足が深刻になっているのは、いわゆる3K(危険、汚い、キツイ)業種だと言われています。そのこと自体の真偽はともかくとして、飲食業や宿泊業、営業、医療でも人手不足が叫ばれているのは事実です。

人手不足がひどいと言われている多くの業種には、ある共通の特徴が存在します。それは労働条件が過酷であることです。特に、非正規労働者が多く、賃金水準が非常に低い業種ほど人手不足が目立ちます。

今後はさらに人口が減るので、日本ではこのような過酷な条件でも働きたいと考える人はどんどん減っていきます。労働市場がタイトになれば、よりよい条件で仕事が見つかりやすくなるので、今のような過酷な条件で働かなくてはいけない人が減るからです。

その裏付けは、直近の求人倍率を見ると確認できます。たしかにここ数年、日本では求人倍率は上昇傾向が続いています。それをいいことと評価する人がいますが、求人倍率は決して健全な形で上がっているわけではありません。

求人倍率のデータを精査すると、企業の規模が小さいほど求人倍率が高くなっている一方で、規模の大きい企業の求人倍率はあまり改善していないのがわかります。

たとえば社員数300人未満の企業の大卒求人倍率は、2013年の3.27から2019年には9.91まで上がっています。一方、社員数5000人以上の大企業では、同じ期間に0.60倍から0.37倍へと、むしろ下がっているのです(リクルート調べ)。

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