自動車業界に迫る中国ベンチャー企業の脅威 「バイトン」の垂直立ち上げに見る既視感

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“コネクテッド”な時代に“クルマを再構築”するというプロジェクトは、必ずしもバイトンだけのものではない。また、バイトンと同じように、部品メーカーや生産技術アドバイザー(たとえばボッシュはトヨタ生産方式をアドバイスするコンサルティングを事業化している)、自動運転やEVの車体制御プラットフォームなどを用いて、短期間でEVを生産しようとしているスタートアップはほかにもたくさんあると考えられる。

そんな中でバイトンが“成功するか否か”は、実はあまり重要なことではない。

バイトンは氷山の一角でしかない

重要なことは、まだ自動運転レベル3が解放されておらず、AIについても保守的にならざるをえず、また自動車産業にとっても将来は市場の縮小が見込まれている日本国内の状況と、EVが当たり前になっていく道が見えている海外の巨大市場の狭間で、日本の基幹産業である自動車産業が、知らず知らずのうちに時代遅れとなり、突然、グローバルの競争力を失っていることに気づく。そうした“産業の突然死”について議論することではないだろうか。

一般的な内燃機関の自動車を作るためには、2万〜3万点の部品が必要とされる。自動車メーカーへの参入障壁の1つとして、多くの部品で構成される製品を安定して安価に量産する生産技術があるが、EVの部品点数は5000点程度しかない。複雑な製品を、低価格かつ高品質に生産する技術の重要度が低くなるのは明白だ。

一方で、自動運転でドライバーが“運転操作”から解放されるようになると、クラウドやAI、ユーザー体験をもたらすインターフェースの実装技術などが、自動車の価値としての大部分を占める時代になっていくだろう。

こうした“水面下での市場ルールの変化”に対して、どのように対応していくのか――。圧倒的な規模の違いだけで、大丈夫だと説明することは難しい。第2、第3のバイトンが控えていることは容易に想像できるだろう。

デジタルカメラが登場した後、フィルムカメラを中心とした現像、プリントなどのエコシステムが崩壊したときの経緯。あるいは隆盛を誇ったフィーチャーフォンに対して、iPhoneが登場し席巻した経緯。日本の自動車産業がガラパゴス化し、競争力を失わないために何ができるのか、真剣に議論を開始すべき時期なのかもしれない。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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