「SPA!」の女子大生蔑視が時代錯誤すぎた理由 今や雑誌の読者は「紙を買う人」だけではない

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『週刊SPA!』のような雑誌の特集には、複数の章立てや見出しがあり、識者コメント、潜入リポート、法則、グラフ、補足情報など、さまざまな要素が詰め込まれています。この点は「1記事1要素」が基本のウェブとは大きく異なるところであり、「さまざまな要素をひとまとまりの特集として楽しめる」ことが雑誌の魅力とも言えます。

「ヤレる女子大学生RANKING」のような固有名詞や未成年を含む、行きすぎた要素が組み込まれてしまったのは、少なからず「要素を詰め込まなければいけない」という前提とプレッシャーがあったからでしょう。そんな雑誌編集現場の背景が、「これくらい過激な要素も入れておいたほうがいいだろう」というリスキーな選択につながってしまったのです。

「面白い」より「簡易マニュアル」を優先

もう1つ見逃せないのは、雑誌を取り巻く環境の厳しさ。私は現在も10を超える大手・中堅の雑誌編集部とやり取りをしていますが、編集者と話すたびに「販売収入も広告収入も、ますます厳しくなっている」という話を聞きます。

そんな彼らの打開策は、「雑誌単体ではビジネスとして厳しいため、ウェブ版の収入を上げよう」というもの。事実、多くの雑誌編集部が「エース級の編集者たちに雑誌とウェブ版を兼務させる」という人事を行っています。

「ジリ貧の雑誌を斬り捨ててウェブ版に特化すればいいじゃないか」と思う人がいるかもしれませんが、そう簡単にはいきません。ウェブ版の主な収益源は広告収入で、雑誌の販売に当たる有料課金を成功させていると言えるメディアはごくごく一部しかありません。そもそも出版業界には、「雑誌には“媒体の顔”としての重要な役割があるから廃刊にはできない」「一度辞めたら二度と戻ってこられない」という考え方が根強く、「魅力的な特集を手掛けることで踏みとどまりたい」のが本音なのです。

ただ、魅力的な特集と言っても、ウェブで無数の無料記事が見られるなか、お金を払って買ってもらうためには、「この雑誌でしか見られない」という差別化が必要。よりエッジの利いた企画や、より具体性のある内容が要求されます。『週刊SPA!』に限らず老若男女の雑誌で、「面白い。読みごたえがある」ものよりも「今すぐ簡単に使えるマニュアル」のような特集が優先されがちなのは、そんな背景があるからです。

『週刊SPA!』はコメント提供などで個人的によく知っている媒体であり、これまで「今すぐ簡単に使えるマニュアル」を尋ねられたことは何度もありました。毎週のように手を替え品を替え、特集を成立させているのは努力の賜物である一方、だからこそ「行きすぎ」のボーダーラインに鈍感なところも散見されます。

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