「SPA!」の女子大生蔑視が時代錯誤すぎた理由 今や雑誌の読者は「紙を買う人」だけではない

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両者が怒りの声を上げていないのは、人気商売であり、多少の宣伝効果を得られるから。当事者だけでなく第三者にも、そんなメリットがわかるため、批判の声を上げにくいところもあるのでしょう。

しかし、確たる根拠もなく臆測と思い込みを主体として具体的に「固有名詞」を出された大学の在学生と卒業生、現在願書を出そうとしている受験生、家族や教師などの関係者は看過できません。イメージダウンという抽象的な損害だけでなく、たとえば志願者の減少や就職活動における不利などといった具体的な実損を被ってしまいます。「大学生の約半数は未成年で、まだ保護される立場」という意味も含め、やはり今回の記事は不適切だったと言わざるをえないでしょう。

もちろん性差別を思わせる記事は、ほめられたものではありません。ただ、今回の騒動からビジネスパーソンが得られる教訓はそこではなく、「『固有名詞』『未成年』の扱いと『近未来の損失』に注意する」こと。たとえば、「ヤレる女子大学生RANKING」だけでなく、「ヤレる職業RANKING」「ヤレる都市RANKING」なども「ネタだから」では許されず、避けるべきでしょう。

「固有名詞」「未成年」「近未来の損失」に注意

「『固有名詞』『未成年』の扱いと『近未来の損失』に注意する」という教訓は、組織だけに当てはまるものではありません。個人においても、ハラスメントや名誉毀損などに直結するポイントであり、十分すぎるほど気を付けたいところです。

次に、「なぜそういう記事が企画され、流通に至ったのか?」というメディアの現状について。

『週刊SPA!』を読んだことのある人や、電車内の中吊り広告を見たことのある人なら、「ずっとこんなことばかりやっている」「今にはじまったことではない」と思うのではないでしょうか。実際、騒動の中で発売された1月15日・22日合併号には「大ブームで予約殺到中!『既婚者合コン』攻略ガイド」という特集があります。

さらに気になるのは、「約6割がお持ち帰り経験アリ!初参加で即日SEXも多数」「今後はヤリモクと健全コンの二極化が進行!」という不倫を助長するような見出し。価値観や立場は人それぞれだけに、「こちらの記事のほうが罪は重い」と感じる人も少なくないでしょう。

次ページ要素を詰め込む雑誌特集の難しさ
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