佐賀県にも「フル規格」長崎新幹線は必要だ

費用負担は合理性欠くが確実にメリットある

なかでも佐賀藩主の鍋島直正と佐賀藩士島義勇は佐賀の人々の誇りである。街中に像が建ち、佐賀を紹介する観光案内などには必ず登場する。鍋島直正は財政改革を成功させ、弘道館を設立して教育改革を実施し、西洋の技術を取り入れた反射炉を作るなど、日本の技術革新に影響を与えた。島義勇は北海道開拓の父、札幌市の都市開発に関わった。

佐賀城本丸の復元が進行中(筆者撮影)

技術的に進取の気性にあふれた佐賀で、進化した鉄道であるフル規格新幹線を受け入れがたいという状況は皮肉である。

2018年3月17日から、佐賀市内と佐賀県の数カ所で「肥前さが幕末維新博覧会」が開催されている。会期終了は2019年1月14日まで。佐賀県立博物館のほか、幕末維新記念館、佐賀城本丸の再生プロジェクト、佐賀城本丸歴史館などで特別展などを実施している。かなり大規模だけれども、浅学な筆者は現地を訪れるまで知らなかった。「佐賀にはなんにもねぇ」と歌うコミックソングを真に受けて、佐賀の情報に疎くなっていた。

もし、佐賀駅に新幹線が通っていれば、今後は近畿圏はじめ山陽新幹線沿線からの観光客を見込めるはずだ。近畿圏の人々が発信した情報は首都圏に飛び火して、もっと広まっていくだろう。

落としどころは金の問題だけか

九州新幹線西九州ルートは武雄温泉―長崎間がフル規格で建設され、新鳥栖―佐賀―武雄温泉間は着工未定である。佐賀県は費用対効果を理由に地元負担に消極的で、佐賀県内は在来線を維持という考えだ。新幹線については、当初はスーパー特急方式、後にフリーゲージトレインの運行を条件に建設を受け入れた。そのフリーゲージトレインが頓挫し、暫定的に武雄温泉駅で在来線特急と新幹線を乗り換える形で進んでいる。

長崎県は全区間フル規格化を望み、政府与党も全線フル規格化が最も効用が大きいと認めている。唯一、佐賀県だけが「当初の約束とは違う」と費用負担を拒んでいる。客観的に見れば佐賀県の協調性のなさが目立っている。

そもそも、整備新幹線計画について、受益に応じた負担額ではなく、一律に建設区間に応じた負担額が定められているという仕組みが破綻している。新鳥栖―長崎間をフル規格で整備した場合の地元負担額は、博多より遠く時短メリットのある長崎県は建設距離が短いから1000億円、博多に近く時短メリットが薄いにもかかわらず、全県横断するため建設距離が長い佐賀県の負担は2400億円とされる。これでは佐賀県が納得できないという主張も一理ある。

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