佐賀県にも「フル規格」長崎新幹線は必要だ

費用負担は合理性欠くが確実にメリットある

新大阪発の「さくら549号」から乗り換える人々だ。首都圏からの視点では思い至らなかった。佐賀や長崎へ行くなら、ダイレクトに空路で行くか、航空便数が多く料金も競争する福岡を経由して博多から「かもめ」に乗るところだけど、近畿圏から佐賀・長崎へ行くなら、博多で「のぞみ」から「かもめ」に乗り換えるより、九州新幹線直通の「さくら」と「かもめ」を新鳥栖で乗り継ぐほうが早い。山陽新幹線、九州新幹線のダイヤも、そのように誘導するかのような設定になっている。

JR九州の「885系」。特急「かもめ」や「ソニック」に使われる(写真:T.Tsuchiya/PIXTA)

新鳥栖から乗ったと見られるスーツ姿の人々は、佐賀駅で大半が下車した。大阪―長崎間は航空がやや優勢だから、大阪―佐賀間の鉄道利用が多いということだろう。この人たちは、長崎新幹線のフル規格化を歓迎するに違いない。

佐賀県の人々はこの事実を認識しているだろうか。佐賀市と博多の間を移動するのであればフル規格新幹線はさほど重要ではないかもしれない。しかし、佐賀県の西部ならフル規格新幹線が便利な地域はありそうだし、遠方から佐賀県を訪れる人にとって、長崎新幹線がフル規格化されれば、そこに新たなビジネス需要、観光需要が見込めると思う。

魅力的な佐賀へ、新幹線で行きたい

佐賀市内の取材後、佐賀県立博物館を訪れた。佐賀県の歴史を地勢の成り立ちからさかのぼり、古代国家の成立、戦国時代、佐賀藩、幕末維新へとつながっていく。肥前刀の妖しい魅力、長崎警備の顛末。そして西洋の技術の獲得、反射炉の製造と蒸気機関の試作へ。佐賀藩は幕末時代、世界の最先端技術を会得していた。蒸気機関を製造し、蒸気船を建造。模型だったとはいえ、蒸気機関車の国産製造第1号は佐賀だった。

こうした見応えたっぷりの立派な施設が入場無料である。100台以上もとめられる駐車場も無料。教育施設だからという大義もあるだろうけれど、なかなかできないことだ。佐賀の人々は豊かだから、こんなところに余裕が表れるのかもしれない。

「佐賀には日本に貢献した偉人はたくさんいる。でも知られていなくて」と、タクシーの運転手さんが語っていた。大隈重信は有名だが佐賀の出とはあまり知られていない。東京駅を設計した建築家、辰野金吾も佐賀出身、日本赤十字社の創設者の佐藤常民、近代日本歴史学の先駆者久米邦武、日本初の工学博士で電気学会の創設に関わった志田林三郎、東京女子医大の創設者吉岡彌生など。

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