日経平均株価はどこで下げ止まるのか 「売られすぎ」を示す「3つのサイン」が点灯

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2018年12月の日経平均株価は、月間ベースの下げ幅が3200円近くに達している。12月初旬の米中首脳会談で「貿易戦争は一時休戦」と安堵感が広がったのも束の間、中旬には中国の通信機器大手の幹部逮捕で貿易摩擦懸念が再燃。そして下旬には予算失効に伴うアメリカ政府機関の一部閉鎖による株安のあおりを受け、日本株も急落している。ただ、テクニカル面からみると、売られ過ぎのシグナルが複数点灯している。

乖離率、騰落レシオ、信用評価損率は売られすぎを示唆

まずは、移動平均線の乖離(かいり)率だ。通常、日経平均株価は短期線の25日線から-5%水準、中期線の75日線から-10%水準、長期線の200日線から-15%水準は売られ過ぎとされている。足元(25日時点)の日経平均株価は、25日線-10.8%、75日線-14.0%、200日線-13.9%まで売られている。なお、16年6月の英国EU離脱決定時の日経平均株価は1万4952円、200日線かい離は-14.7%だった。

次に、市場全体の過熱感を示す騰落レシオである。東証1部の値上がり銘柄数を値下がり銘柄数で割って算出する騰落レシオ(25日平均)は、70%前後が売られすぎの目安とされている。足元(同)は65.64%まで低下している。騰落レシオはテクニカル指標のなかでも、特に底値圏での信頼性が高いとされている。

最後の3つ目は信用取引の評価損益率。相場の天井・底を探る指標の一つで、信用買いの評価損益率が-15%前後が売られ過ぎの水準、-20%を下回ると追加証拠金(追い証)発生を警戒した個人投資家の見切り売りが膨らむとされている。14日申込時点で-13.63%だが、足元の急落で一段と悪化してしまった可能性が高い。またクリスマス休暇中の海外投資家も多く、年内の大きな反発は期待しづらい。それでも一本調子の下げがそろそろ一巡しつつあるとの見方もできそうだ。

来年の話をすると鬼に笑われそうだが、2019年の相場格言は「亥固まる」。戦後における亥年の日経平均株価は4勝1敗、平均騰落率は+16.2%と比較的堅調だ。街ではクリスマスを彩る艶やかなイルミネーションが消える一方、株式市場ではテクニカル指標のシグナルが灯りつつある。2018年の「災い」を転じて、2019年は「福がやって来る相場」を期待したい。

最後に、今後の日経平均株価における重要な節目をあげておこう(12月25日時点)
2万4270円 2018年10月高値(年初来高値)
2万2764円 2017年末値
2万2295円 75日線(中期線)
2万2264円 200日線(長期線)
2万1492円 25日線(短期線)
2万0617円 2018年3月安値(米中貿易摩擦懸念)
1万9155円 2018年12月25日終値(年初来-15.9%)
1万9114円 2016年末値
1万8925円 200日線-15%
1万8424円 年初来-18.8%
1万8335円 2017年4月安値(仏大統領選懸念)

中村 克彦 みずほ証券 シニアテクニカルアナリスト

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なかむら かつひこ / Katsuhiko Nakamura

IFTA国際検定テクニカルアナリスト(MFTA)、日本テクニカルアナリスト協会(NTAA)評議員。

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