中国人の街・川口で広がる「日本人との距離」

芝園団地の人々は何を考えているのか

2014年に自治会が住民200人に対して行ったアンケート調査では、東北3省(遼寧省、吉林省、黒竜江省)出身者で、主に30代のファミリー層が多かった。

2017年からこの団地に住んでいる20代の中国人男性はこう語る。

「私は上海出身なのですが、これまで同郷の人には1人しか会ったことがありません。東北や福建省出身者が多いのではないでしょうか。仕事はIT企業のエンジニアが多い。蕨からは品川や新橋、東京駅にアクセスしやすく、池袋にも近い。生活費の安さや住みやすさがクチコミで中国人社会に広まり、ここまで数が増えたのでは」

確かに、隣駅の西川口駅前に広がる新興のチャイナタウンで中華料理のメニューを開いて見ても、とくに東北料理や福建料理が多く、平日の夜に食べに行くと、会社員風の男性や若い家族連れが目につく。

筆者が気になった「言葉」の問題

芝園日本語教室で使っている教科書の数々(写真:筆者撮影)

また、筆者が気になったのは、「言葉」の問題だ。市内に多数ある日本語教室の存在だった。川口市のパンフレットによると、市内には19カ所もの日本語ボランティア教室がある。

日本に住む中国人は約73万人(2017年末の法務省の統計)に上るが、大まかにいえば、1)留学生、2)留学後そのまま就職や結婚をした人、3)仕事のために来日した人々(とその家族)の主に3つに分けられる。

1)~3)のいずれの場合も、技能実習生などの場合を除き、基本的には本国で日本語を学んでから来日したか、あるいは来日後、日本語学校などで本格的に日本語を学んだケースが多いと思われる。つまり、日本にいる中国人の大半は、日本語はある程度話せることが多い。

ところが、ここには日本語教室が多く、まだ日本語を話せない人が多くいるとみられる。

つまり、“通常コース”から外れた人々、たとえば祖父母や乳飲み子を抱えた主婦、祖父母の元から親元に返された子どもなどのように、来日前に日本語を学ぶ機会がなかった人々が多く来日しているのではないかということだ。

団地内でベビーカーを押しながら散歩している若い女性とその母親らしき中年の女性に中国語で声を掛けてみた。

「私は福建省出身です。ここに引っ越してきて1年くらい。夫の友人の紹介でここに住むことになりました。まさか私が日本に来ることになるとは思っていなかったのですが、夫が池袋で飲食業に勤めることになって、私も夫についてやってきました。この団地なら中国人が多いし、私も寂しくないだろう、と思ったみたい。母も中国から手伝いにきてくれるし、周囲はみんな中国語ばかりの環境なので安心。ここで中国人の友達もできたし、日本語ができなくてもまったく不自由しないですよ」

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