ゴーン逮捕で浮き彫りになる「日本の特殊性」 ゴーンと日産をめぐる7つの疑問

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つまり日産にしてみれば、外資の軍門に降るということは、世界的な競争力を取り戻そうと過去20年間にわたって積み上げてきた血のにじむような努力が水の泡になることを意味する。ということは、日産(および日本政府)によって周到に準備が進められてきたゴーン氏の逮捕は、やはりルノーによる吸収合併を阻止することが最大の狙いだった、ということになるのだろうか。

4番目の疑問は政府に関するものだ。今回の事件に、日本政府とフランス政府はどのように絡んでくるのだろうか。

日仏政府が同意なしでの決着はあるのか

日本政府は日産と三菱自動車の株主ではないが、状況を注視している。自動車は日本の基幹産業だからだ。日本政府は日本の産業競争力、および国の繁栄にとって自動車産業が今後ともカギを握ると考えている。さらに日産の取締役会、そして最近になって日産の企業統治を検証するために新しく設置された委員会のメンバーにも、経済産業省の元高官の名前がある。

同様にフランス政府にとっても、国内で4万8000人を雇用するルノーは大切な存在だ。フランス政府はルノー株を15%保有する筆頭株主でもある。加えて、エマニュエル・マクロン大統領はこのところ激しい反政府デモによって国内が不安定化する事態に直面しており、ルノーの利益を守ることの切実さは増している。

以上のような状況をふまえると、日仏政府が同意しないような形で問題が決着することは難しいだろう。では、日本とフランスの政府はこの件で今後、どのような役回りを演じることになるのか。これが4番目の疑問である。

5番目の疑問は、日本の刑事司法制度に関するものだ。逮捕され、拘置所に身柄を拘束されているゴーン氏は家族と接見できず、弁護士との接触も制限されている。これについて海外からは疑問の声が上がっている。

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