自動車税制の大幅改正、「買い時」はいつか それでも「わかりにくさ」はまだ残っている

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税制改正を行う背景には、消費増税に伴う車両の販売減少を抑える狙いがある。そこも視野に入れて、2019年4/5月にはエコカー減税率を下げる。消費増税前に自動車取得税と同重量税の納税額を増やすことで、消費増税前の駆け込み需要と増税後の落ち込みを緩和するわけだ。

ただし環境性能割は本来の趣旨と異なる。消費税率が10%になったら、二重課税になっていた自動車取得税を単純に廃止することになっていたからだ。それなのに環境性能割が設けられ、この内容は前述のようにエコカー減税を実施する自動車取得税とほぼ同じになる。名称と税率を少し変えたにすぎない。

また初年度登録(軽自動車は届け出)から13年を超えた車両の「重課」も残り、自動車ユーザーの実質的なメリットは自動車税の引き下げ程度だ。

いつどのような自動車を買えば良いのか

最もトクな買い方は、現行エコカー減税が実施されている2019年3月31日までに、登録や届け出を行うことだ。2019年の4月(自動車取得税)、5月(自動車重量税)になると段階的に新しいエコカー減税が実施されて税額が高まってしまう。

ただし現時点で自動車取得税や同重量税が免税になっている車種は、新しいエコカー減税でも購入時の免税に変更はない。したがって2019年4月以降に購入しても購入時の税額は同じだが、購入後の初回車検時に納める自動車重量税の免税は対応が変わる。2020年度燃費基準+50~80%達成車は、現行エコカー減税であれば初回車検時の自動車重量税も免税だが、2019年5月1日以降の登録では免税を受けられない。ハイブリッド車でも対応が分かれるので注意したい。

判断に悩むのが減額される自動車税とのバランスだ。消費増税後に購入すると、先に述べたように自動車税が1年間で1000~4500円安くなる。高価格車は減税額が少なく、2%の違いでも消費税は多額になるから、消費増税前に登録するのがトクだ。

しかし1000cc以下の車種は価格が安く、たとえばトヨタ「パッソ」で1000Xというグレードを選ぶ場合、税抜き価格は109万円だから、消費増税分の2%は2万1800円に相当する。

一方、購入後に納める自動車税は年額4500円安くなるから、5年間所有すれば自動車税の減税で、2万1800円の消費増税分を取り戻せる。

またパッソは2020年度燃費基準+10%を達成するから、2019年10月1日から2020年9月30日までは環境性能割が免税になる。重量税はエコカー減税率が下がって増えるが、ほぼ相殺されると考えていい。そうなると消費増税後の方が若干安くなる可能性がある。

こういう計算はパッソのような低価格車に限られるが、消費増税に伴って、自動車税は非常に複雑になってしまう。

特に購入する車種によって、損得勘定がバラバラなのは困る。消費者の立場に立ったわかりやすい自動車税制を望みたい。

渡辺 陽一郎 カーライフ・ジャーナリスト

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わたなべ よういちろう / Yoichiro Watanabe

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまにケガを負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人たちの視点から、問題提起のある執筆を心掛けている。

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