西武「新特急」、不思議デザインが走り出した 丸い先頭形状から巨大窓まで「初めてづくし」
運転士の誤認リスクに関しては、運転席の模型を作って実験したほか、比較的似た塗装の車両を使っている同業他社に頼んで実験させてもらうなどして支障がないことを確認。鉄道作業員や歩行者の安全確保については、前照灯の照度を上げることで対応することになった。
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両先頭車両が丸い一方で、車体が四角いのは、地下鉄への乗り入れも前提にしたためだ。「地上を走るだけならもう少し横に丸みを持たせることは可能だったが、地下鉄のトンネルのサイズを考えると難しい。また地下鉄に合わせる形で丸みをもたせると、逆に客室内の空間が狭くなるため、四角いデザインになった」(西武鉄道)という。
実は妹島氏からは、車体をもう少し丸く見せるため、窓ガラスを丸みをもたせて施工する方法が提案されていた。建築物では窓枠に強い力をかけてガラスを押し込むことで、フラットなガラスに丸みを持たせる施工が可能なので、この方法を妹島氏は主張したのだ。
しかし、ガラス自体が重層構造であるために歪曲するおそれがあったことに加え、万一割れるなどして交換をしなければならなくなった場合に、西武鉄道では交換ができない。このため、妹島氏の斬新なアイデアは幻に終わったらしい。
「世界で活躍している人」で妹島氏に白羽の矢
そもそも鉄道車両の監修経験がない妹島氏の起用はなぜ実現したのか。
「これまでに見たことがない車両を作ることが目標だったので、殻を破り、イノベーションを起こせる人というのが必須条件だった。鉄道車両デザイナーでは殻を破れないと考え、鉄道車両デザイナー以外で、世界で活躍している人を中心に、車両部のスタッフ総出で声をかける人を考えた」という。
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西武鉄道は建築家の隈研吾氏にレストラン電車「52席の至福」のデザインを依頼し、大評判となった成功体験があり、建築家という選択肢は想定内ではあっただろう。
妹島氏は隈氏に比べると一般人にも広く知られた存在とは言いがたいが、建築業界のノーベル賞と言われるプリツカー賞を2010年に受賞。日本人としては丹下健三氏、槇文彦氏、安藤忠雄氏に次ぐ4人目、日本人女性としては初の受賞者である。「世界で活躍している人」という条件で探したからこそ浮上した候補と言える。
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客室内は、床面が樹脂シート貼りからカーペット敷きに変わる。また、最新鋭のVVVFインバーター装置を導入しており、レッドアロー号に比べ、客室内は格段に静かになる。
年明けからは試運転が本格化し、鉄道ファンの“取材”も本格化するだろう。「タモリ電車クラブ」から取材依頼が来るかも?
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