西武「新特急」、不思議デザインが走り出した 丸い先頭形状から巨大窓まで「初めてづくし」

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鉄道車両の構造基準はすべてJIS(日本工業規格)で細かく規定されている。窓の高さについても、「鉄道に関する技術上の基準を定める省令の解釈基準」で、「座席の側面または背面窓は、床から80センチ以上」とされているが、開閉不可能な固定式の窓の場合はこの基準が適用されない。 

窓ガラスの強度についても走行中の車体のしなりやねじれ、バウンドなどを吸収できるだけの細かい規定がある。

その強度規定をクリアするため、車体に使われたのが、軽量で強度もあるアルミの押出型材。加熱したアルミ合金をダイス金型という断面を立体構造にできる金型で押し出して作る。「窓回りは特に厚みを増して強度を上げた」(西武鉄道)という。

ガラスも日本板硝子社製の特注品だ。高機能の特殊強化ガラス3枚と特殊膜を貼り合わせている。

窓ガラスは日本板硝子製。「レオ人形」が一足早く乗車しているのはご愛敬(撮影:大澤誠)

遮音・赤外線カット機能を持つ樹脂製の中間幕を、強化クリアガラス2枚で挟み、ガラスの内側面にメタシャインという顔料で窓全体に細かいドット柄を焼き付け、それと低反射膜付き強化ガラスを空気層を挟んで貼り合わせてある。

中間に膜が挟まっているので、ガラスは割れても蜂の巣状にはなるが、飛び散ることはない。

メタシャインは粉状のガラスの表面を金属コーティングした顔料で、自動車のガラス用に日本板硝子が独自開発した。鉄道車両の側面窓ガラスへの採用は今回が初だ。

ちなみに、運転席部分に使用される3次元曲面ガラスはAGC(旧・旭硝子)から調達しており、「最小半径の3次元曲面ガラス導入は国内初」(西武鉄道)だという。

常識破りの「目立たない車両」

車体を目立たなくしたことも鉄道車体製造の常識を覆す発想だ。

池袋駅近くに2019年春竣工予定の西武鉄道新本社ビルから飛び出すラビュー(撮影:大澤誠)

妹島氏が設定した「都市や自然の中でやわらかく風景に溶け込む」というデザインコンセプトに従い、ほどよく周囲の風景が映り込むことを狙って、アルミ素材の上からアルミカラーの塗料を塗ってある。

デリケートな塗装なので、洗車機のブラシはソフトなものに変え、吹き付ける水も電解水を使う。

これまで、鉄道車両は目立つようにデザインすることが常識とされてきた。車体に光が反射したり風景が映り込んだりすると、対向列車の運転士、さらには線路付近で業務を行っている鉄道作業員や遮断機をくぐって踏切を渡ろうとする歩行者が、車両の接近に気づきにくいのではないかといった先入観があるからだ。近年はモーター音が静かになっていることも拍車をかける。

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