公取委がメス ヤマダ電機に逆風

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立ち入り検査の翌週にすかさずメーカー説明会

ヤマダ電機は、2000年に大型小売店の出店規制が緩和されたのを契機に、売り場面積3000平方メートルを超える大型店を年間40~50店のペースで出店するという急攻勢に出た。07年3月期の連結業績は売上高1兆4436億円、経常利益717億円と過去最高の収益を計上。売上高では業界2位エディオンに倍近くの差をつけるなど、業界での存在感は際立っている。 近年、国内の家電マーケットが7・5兆円とほぼ横ばい状態にある中、売り上げを維持したいメーカーは、全国で頭抜けた販売力を持つヤマダの存在をないがしろにできない。メーカーが難しい要求を飲み続けることで、優越的な地位がさらに高まり、過度な要求が通ってしまうような土壌が醸成されてきたともいえる。

 「公正取引委員会により具体的指摘事項がなされた時点で……」とするヤマダ電機だが、検査が入った翌週の5月14日、15日の2日間にかけて、本社にメーカーの担当者約200人を集め、今回の経緯を説明している。ヘルパーの扱いについても、自社商品の販売以外の仕事をする場合は業務委託という形でヤマダが費用を負担するなど、改善策を申し入れている。

公取委の結論が出るまで数ケ月かかりそうだが、規模の急拡大でメーカーから有利な条件を引き出し、業績拡大を進めてきただけに、公取委から何らかの是正命令が下れば、従来の勢いが鈍る可能性もある。

ただ、5月15日の決算発表と同時に、グループ傘下にマツヤデンキやサトームセン、星電社などを抱える、ぷれっそホールディングスの買収を発表した。目下、手薄だった都市部の出店でも攻勢をかけており、拡大の意欲はなお旺盛だ。公取委のメスが入りメーカーへの過度な要求が緩和されても、ヤマダの突出した販売力にメーカーが頼り続ける。その構図は揺るぎそうにない。

(撮影:尾形文繁)

中島 順一郎 東洋経済 記者

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なかしま じゅんいちろう / Junichiro Nakashima

1981年鹿児島県生まれ。2005年、早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業後、東洋経済新報社入社。ガラス・セメント、エレクトロニクス、放送などの業界を担当。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、ニュース編集部などを経て、2020年10月より『東洋経済オンライン』編集部に所属

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