茨城の国立大が「カフェ」を構内に招いた理由 「開かれた大学」の象徴としても効果的

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学園祭の販売ブースで、学生にコーヒーミルの
使い方を説明する鈴木会長(筆者撮影)

そこで行ったのが、文献の徹底調査と茨城大による“お墨付き”だ。日本コーヒー文化学会副会長でもある鈴木氏と同大の小泉晋弥教授、清水恵美子准教授が中心となった。たとえば天心が東京美術学校(現東京芸術大学)校長在任当時、友人の翻訳家に宛てた書簡に「兼而得御意候 コヒー器械差出候」と文面があったのを、清水氏が発見。器械は現在のコーヒーミルと想定でき、「以前から話題にされていたコーヒー器具をお送りします」と訳した。

天心はアメリカ・ボストン美術館の中国日本美術部に着任以来、アメリカと日本を5回も行き来した。ボストンは“アメリカンコーヒー”の発祥地でもあり、そうした史実も踏まえて当時の味を再現。商品名は、文献にちなみ「五浦コヒー」とし、パッケージの文字は書家で茨城大名誉教授の川又南岳氏が揮毫。こうしたエビデンスで、反発の声も消えた。

入学式で新入生に配布した「茨城大学コミットメント」(筆者撮影)

2017年には大学が「茨城大学コミットメント」を発表。入学した学生が4年間で身に付ける力を「5つの茨城大学型基盤学力」と設定した。

この中には「地域活性化志向」もあり、茨城をはじめとする地域の活性化に自ら進んで取り組み、貢献する積極性を掲げている。

今年11月17日、筆者は茨城大学学園祭「茨苑祭」を視察した。「五浦コヒー」を学生が販売するという話を聞いたからだ。茨城県内にまいた種が、徐々に実りつつある。

筑波大学は地元スーパーも誘致

一方、筑波大学が中央図書館に隣接して、2008年に「スターバックスコーヒー」を誘致したのは、同大教授で附属図書館長だった植松貞夫氏(現名誉教授)の肝いりだった。

「2005年につくばエクスプレスが開業し、東京都内と茨城県の交通アクセスが各段に向上しました。その前から大学では『キャンパスリニューアル』の一環で、次世代の学習と交流スペース改善を掲げ、カフェに来るついでに図書館を利用する学生の増加も目指したのです。すっかり利用者に浸透し、特に留学生の利用が目立ちます」(芸術系准教授の渡和由氏)

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