茨城の国立大が「カフェ」を構内に招いた理由 「開かれた大学」の象徴としても効果的

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学内のカフェとはいえ学生料金ではなく、大半のコーヒーが400円台だ。唯一「お試しコーヒー」が190円なのが学生への配慮か。「静かな空間が好きなのでよく来ます」(人文社会科学部1年の女性)という声もある一方、「学食に比べて高いので、年に数回しか来られません」(同学部2年の女性)という声も聞いた。教職員や地元民には好評のようだ。

茨城大学の三村信男学長(筆者撮影)

「打ち合わせや研究会終了後の懇談の場としても快適で、よく利用します。すてきなカフェができたので、学外の方をお招きしやすくなりました」(人文社会科学部の清山玲教授)

一般の来店客からは「大学関係者でなくても入れるので夫婦で利用した」「カウンター席にはコンセントがあり、スマホなどの充電に便利」という声があった。

岡倉天心にちなんだ「五浦コヒー」も開発

実は、茨城大とサザコーヒーが連携するのはカフェだけではない。2016年には「県内の北茨城市・五浦(いづら)地区の魅力アップにつながる商品」としてコーヒーを共同開発した。「茨城大学 国際岡倉天心シンポジウム2016」に合わせた商品開発だった。

五浦は海岸沿いに切り立った崖が続く景勝地で、近代日本の芸術思想家・岡倉天心(覚三)ゆかりの土地だ。1906年に天心らが日本美術院第一部(絵画部)を当地に移し、天心が建てた六角堂もあり、現在は茨城大が管理する。「茨城大学五浦美術文化研究所」もある。

五浦の景観と六角堂(画像提供:茨城大学)

当時、大学から商品開発の依頼を受けたサザコーヒーが開発に取り組み始めると、地元から思わぬ反発が起きた。天心は、英文の著書『THE BOOK OF TEA(茶の本)』が知られており、「天心とコーヒーと五浦を結び付けるのは違和感がある」との意見が出た。つまりコーヒー店が、お茶でなくコーヒーを開発するのは“我田引水”だと思われたのだ。

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