向こう5年は安泰?急回復するセメント業界 建設特需の恩恵をいち早く享受

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2013年度の国内需要(輸入含む)について、太平洋セメントは4700万トン(前期比5.4%増)と試算する。が、同社の福田修二社長は「10月や11月の伸び率を見ると、多少プラスアルファの可能性がある」と言う。さらに、「来年度も同じぐらいだろう。人手不足で工事は遅れぎみのため、2020年の東京五輪前まではこの水準から大きく減ることもない」と見通す。

つまり、業界各社の業績は向こう5年は安泰で、利益水準もITバブル期に記録した過去最高に近い高原状態が続きそうだ。今上半期の業績だけを比べたら、セメント業界が一人勝ちのように見える。

しかし、太平洋セメントの業績急拡大は、単純に需要が増加したことだけによるものではない。震災が起きる直前に複数の工場閉鎖と4千数百名もの人員合理化という大リストラを断行し、年間160億円の固定費を削減するコスト構造改革という下地があったからこそ実現したことだ。宇部三菱セメント、住友大阪セメントなどの同業他社も同じように、国内販売の低迷に耐える縮小均衡路線を見込んだリストラを震災前に終え、損益分岐点を下げていた。

それでもなお体質改善には残された課題が多い、と福田社長は言う。装置産業であるセメントメーカーが供給責任を果たすには、生産・物流設備の更新や改修を行う巨額の原資を生み出し続けなければならない。そのために、内部留保を老朽設備の更新に充てたり、グループ各社の再編を通じた財務体質強化を行う必要性を強調する。

今秋から値上げ交渉を開始

その原資を生み出すため、今年10月1日出荷分からセメント各社は1トン当たり1000円前後(約1割増)を求めて、個別ユーザーごとに値上げ交渉を始めた。「業績を上方修正するほど儲かっているのに値上げとは何様だ、という顔をされる」と、業界関係者はこぼす。それでも、支店単位で値上げの根拠を積算データで示し、きめ細かく説明するなど粘り強く訴えかけている。

約1割の値上げは難しいとの見方もあるが、「来春をメドに(少なくとも)平均500円の値上げを実現させたい」(福田社長)。旺盛な需要を背景に、業界各社の足並みはそろっている。


週刊東洋経済2013年12月17日号(12月2日発売)では、突然の活況で浮沈するゼネコンの現状について、40ページにわたって特集を組んでいます。

古庄 英一 東洋経済 記者

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ふるしょう えいいち / Eiichi Furusho

2000年以降、株式マーケット関連の雑誌編集に携わり、『会社四季報』の英語版『JAPAN COMPANY HANDBOOK』、『株式ウイークリー』の各編集長などを歴任。

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