――『男はつらいよ』『釣りバカ日誌』を代表とした松竹喜劇ともいうべきシリーズ物が少なくなってします。本作はそれらの系譜にある映画だと思います。かつてのシリーズ物は、芸達者な役者たちがオーバーなくらいの喜劇的な演技を披露していたと思います。その辺を意識して演出されたのでしょうか?
僕としては、もっと思い切った喜劇にしたいというのがありました。ただ、思ったより、喜劇よりも人情話のほうにいってしまった。本当はもっとドタバタにしたかったのですが。映画が難しいなと思ったのが、生身の人間が動くわけなので、突然、ドタバタをやらせてもダメなこと。ドタバタをさせるには、させるだけの必然がなければ動きづらいということがわかってきました。
3つのジャンルから、3人の名優が!
――それでも主役の3人が芸達者だからこそ、喜劇的な面白さが生み出されたのだと思います。俳優の國村さん、お笑いの板尾さん、声優の山寺さんと、異業種の3人がうまい具合に融合していました。
そうですね。皆さんのパフォーマンスは僕の想像以上でした。もちろんやってくださる方々だとは思っていましたけど、みなさんの役割を考えて非常にうまくやっていただいたなと思っています。
――『男はつらいよ』や『トラック野郎』の例を挙げるまでもなく、シリーズ物には、マドンナの登場が必須となります。今回は桐谷美鈴さんがマドンナにあたると思うのですが、キャスティングはどのように決められたんですか?
確かにマドンナは定番ですね。だいたい出演者がおじさんばかりですから、しっかりと“妖精の役”をやっていただける方ということで、桐谷さんにお願いしました。
――本作では板東欽三(山寺宏一)が刑務所に入っているという設定です。宮崎刑務所の中で撮影が行われたのは、本邦初だと聞きました。そこにハードルはなかったのでしょうか?
受刑者役はエキストラをも含め、出演者は全員、五厘刈りにすること。非常警報の位置など、撮影してはいけないと言われたものは撮影をしない。それさえ守れば、ほとんど大丈夫でした。作業場でも撮影を許可していただきました。
――板東が脱走を試みるシーンもありましたが。
僕もダメかと思いましたけど、脱走は失敗だったからよかったんじゃないですかね。脱獄が成功する話だったら、もしかしたら許可は出なかったかもしれないです(笑)。
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