上司の悪口ばかり言う先輩を撃沈させる一言 ネガティブな感情が一瞬で収まる

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マティッチはがぜん動きがよくなり、その試合に勝つわけですが、ではそのメモには何が書いてあったのか。マティッチ本人がインスタグラムで公開したところによると、“YOU HAVE 3 DAYS OFF”。3日間の休みを与えるというわけです。しかも簡単なニコニコマークまで書き込んでいました。緊迫した場面でこういう冗談めかしたメモを渡すあたり、さすが名将と呼ばれるだけのことはあります。

上司と部下の間でも、こういうメモ・コミュニケーションは有効ではないでしょうか。特定の異性だけに渡すと誤解を招くおそれもありますが、全員に個別具体的なことを書いて渡せるようになれば、“名将”と呼ばれる日もそう遠くないかもしれません。

先輩のネガティブな感情を抑える一言

ケース3:上司の悪口ばかり言う先輩に、そのことのむなしさを伝えたい

「だったらもう辞めちゃうっていうのもありじゃないですか、先輩」

福澤諭吉の話が参考になります。諭吉の兄たちがずっと藩の上司の悪口を言っていたとき、それを聞いていた諭吉は内心「そんなに嫌なら藩を出てしまえばいいのに」と思ったそうです。そして後年、福澤諭吉は本当に中津藩を出てしまいます。

この話になぞらえて言うなら、ずっと上司の悪口ばかり言っている先輩には、冗談っぽく、「だったらもう辞めちゃうっていうのもありじゃないですか、先輩」と言ってみるのはいかがでしょう。暗にどういうことを伝えたいかというと、「辞める勇気がないのであれば、そんなことばっかり言っていてもしょうがないですよね」。

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こういう一言が、意外に相手に響くことがあります。先輩が「いや、俺はそこまでの勇気はないな」と自分で認めれば、その直後に「俺も、ずっと愚痴ばかり言っていてもしょうがないな」と気づくというのは、十分ありえることです。少なくとも、先輩のネガティブな感情は、一瞬収まるのではないでしょうか。

このことで先輩との関係が悪くなってもつまらないので、あくまで冗談っぽく話して「和やかなコミュニケーション」に持ち込むことが得策です。先輩のほうも、口では「なんだうるせえな、辞めねえよ(笑)」などと返して、「そうですよね(笑)」と返事する、といった流れに落ち着くのが望ましいといえるでしょう。

夫婦げんかのときにも、誰かの一言で夫婦のネガティブな感情が一瞬鎮まることがあります。長々と夫婦げんかをしているときに、子どもか誰かが「じゃあ別れちゃえば」と言ったらどうでしょうか。「いや、別れるほどでもないんだけど」と思った直後に、ふっと、フル回転していた愚痴の「火の車」が止まるのではないでしょうか。

齋藤 孝 明治大学教授

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さいとう たかし / Takashi Saito

1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業後、同大大学院教育学研究科博士課程等を経て、明治大学文学部教授。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。ベストセラー著者、文化人として多くのメディアに登場。著書に『声に出して読みたい日本語』(草思社)、『読書力』(岩波書店)、『雑談力が上がる話し方』(ダイヤモンド社)、『質問力』(筑摩書房)、『語彙力こそが教養である』(KADOKAWA)、『読書する人だけがたどり着ける場所』(SBクリエイティブ)ほか多数。著書発行部数は1000万部を超える。

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