台湾に登場、公共交通「定額乗り放題」の衝撃 1カ月6000円で電車もバスも、タクシーまでOK
高雄市はMaaSのための準備を周到に進めてきた。まず、サービスを最適化して提供するためには、リアルタイムの旅客データを得る必要がある。そのためには、バスやLRTの乗り降りの際、利用客にICカードをしっかりタッチさせなくてはならない。
そこで市は昨年12月から今年2月までの3カ月間、LRTとバスが終日無料、MRTがラッシュ時のみ無料となる公共交通利用促進期間を実施した。乗降時にICカードをタッチすると無料になる仕組みで、これによって正しい旅客データを得ることに成功した。
また、大手通信事業者の中華電信からはアプリを利用している人のデータが基地局を介してリアルタイムで高雄市交通局のコントロールセンターに行くようになっている。
こうした地ならしの上で「Men▶Go」によるMaaSに踏み切ったのだ。
自動運転やAIが重要なわけではない
率直に言えば「Men▶Go」は、個別の取り組みで目新しいものはない。日本でも場所によっては実現していることであったり、いますぐにでも実現可能なものであったりする。しかし重要なことは、高雄の公共交通が明確なビジョンの下に整備され、使いやすいように整備されていることだ。
日本でもMaaSは注目されてきている。しかし、我が国のMaaSの議論はドアtoドアや周辺サービスとの連携という部分に集中している。またトヨタの参入や大手私鉄の取り組みを見ていると、自動運転またはAIの活用による「自動車に近いモビリティを用いたドアtoドアサービス」や「単なる大手私鉄の自社グループのサービスへの囲い込み」に見えかねない。
本来、MaaSの考え方で大切なことは形ではない。「人々が適材適所で交通機関を乗り継いで利用し、便利かつ快適に生活できる」ということだ。そのためには人々がストレスを感じることなく様々な交通モードを乗り継ぐことができることと、本当に便利に利用できる交通体系が構築されていることが必要ではないだろうか。
便利なネットワークが形成されていなければ、乗り放題にしても乗り換えが面倒で使われないケースが出てくるに違いない。そしてそのMaaSにしても、個人や法人が参加するための障壁が低くなくては普及しない。
MaaSはいまの日本でも不可能ではない。いま日本がやるべきこと、それは自動運転やAIといった技術の形を決めて開発することではない。本当にやるべきことは、「人々が適材適所で交通機関を乗り継いで利用し、便利かつ快適に生活できる」ために、できるだけ早くいまある交通ネットワークを人々が利用しやすいものとし、MaaS実施に向けた環境を整えることなのではないだろうか。
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