900億円赤字のスルガ銀、遠い再生への道のり 半年で預金6700億円が流出、見えぬ支援先

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会社側は創業家に持ち株の放出を働きかける意向を示しており、15%程度を保有する創業家の持ち株の行方や支援先がマーケットで取りざたされている。それは、個人取引というニッチな分野に特化したスルガ銀行の支援先としては、政府よりも投資ファンドなどの資金提供者のほうが向いているというマーケットの認識がある。外部との資本・業務提携の可能性を問われた有國社長は「当社の企業価値向上につながるなら検討する」と前向きな姿勢を示したが、「今はそういう話はない」とも答えた。

では今回の決算で追加損失の恐れは払拭されたかのか。市場関係者の見方は分かれる。第三者委員会や金融庁がシェアハウス融資と同様に不正があると認定した中古の1棟アパートなど投資用不動産融資に関しては、実態解明のための全件調査が始まったばかりだからだ。

スルガ銀行は、2018年4~9月期に与信費用を1196億円計上した。そして、下期の与信費用は144億円で収まると見通している。同行によれば、シェアハウスの延滞率30%に対し、1棟向け融資では延滞率はわずか0.5%と低い。有國社長は「シェアハウスよりかなり前から取扱いがあって足元でこの延滞率であることから、全件調査の影響は限定的。(下期の144億円も)保守的にみた数字だ」と主張する。

半年で預金6700億円が流出

もちろん調査で不正が発見されたとしても、その融資がすぐ延滞するわけではない。だが同時に、将来の回収可能性は足元の延滞だけで判断できるものでもない。ある銀行によると、返済に滞りがなくても、一定基準に該当する先からは毎年確定申告を取得し、年間の賃料収入を把握するなど個別に詳細な自己査定を行う。その結果、貸倒引当金を積み増す場合もあるという。

スルガ銀行は、投資用不動産融資の全件調査を年度内に終わらせる方針だ。ただ、その残高は1兆6770億円とシェアハウスの8倍以上。一方で引当金の額は9月末で303億円にとどまる。実態解明にメドがつくまでは、追加引き当ての懸念がくすぶり続ける可能性もある。

会見では、「預金の流出が加速しているのでは」といった質問も続いた。9月末の預金残高は2018年3月末と比べて6700億円以上減少した。有國社長は「10月に入って(預金流出は)落ち着いている。9月末で現金預け金は5317億円あり、手元流動性は十分だ。日本銀行とはつねに緊密に連携していて、資金繰りに万全の態勢を取っている。危険水域に陥るという認識は持っていない」などと強調した。

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