「キャプ翼」の葛飾にJクラブを作る夢と現実 南葛SCの関東2部昇格に向けた挑戦は来季へ

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福西崇史選手(左)と高橋陽一先生(中央)(筆者撮影)

しかし、大きな期待を背負った11月4日の試合で南葛SCは東邦チタニウムに0-1で敗れこの大会から敗退した。

また来年も東京都1部リーグを戦うことになった。

敗戦から2週間が経ち、現在の気持ちを高橋先生と岩本GMから聞いた。

「負けた直後は、そこまででもなかったですが、家に帰る車の中では、自分で思っていた以上にショックを受けてるのに気づきましたね。

今でも、ふとした時に、負けた瞬間のことを思い出します。やっぱり、甘くなかったです。これから先は切り替えて、前を向いてやっていくだけですね」と、高橋先生は話す。

「負けた直後はさすがに堪えましたが、負けた瞬間から来季に向けて動き出すのが自分の仕事です。今はもうその準備で頭がいっぱいですね。スポンサーセールス、練習場の確保、株式会社の設立、スタジアム建設に向けたさまざまな動きなど、やらなければいけないことはたくさんあります。

将来のJリーグ入りを目指して、一歩一歩積み上げていかなければいけない状況は何も変わってませんから、僕らはブレずにやるべきことをやっていくだけです」(岩本GM)

南葛SCの将来の夢とは何か

将来のJリーグ入りを見据えているなか、本拠地となるスタジアムの建設構想を葛飾区と相談しながら進めている。

「今話題になっている代々木公園にスタジアムを作る構想よりも先に南葛SCが葛飾区にスタジアムを作ってやろうという高いテンションを持ちながらやっています。

東京23区内に、ちゃんと利益を上げられる“プロフィットセンターとしてのスタジアム”というモデルケースを作りたいんです」(岩本GM)

葛飾区からのバックアップもある。東東京の下町にJリーグクラブをつくりたいという熱も高い。高橋先生以外にも、漫画家は秋本治先生(『こちら葛飾区亀有公園前派出所』)や平松伸二先生(『ドーベルマン刑事』や『ブラック・エンジェルズ』など)といった大御所が葛飾区にいる。葛飾区としてもスポーツと漫画を含めた文化を大切にするという方針だそうだ。

まずは関東2部リーグに昇格するという目先の目標はあるが、南葛SCの将来の夢はどのようなものなのか。

「いろいろなクラブの形があって、南葛SCには世界的にも有名な『キャプテン翼』というキャラクターがいます。イニエスタもフェルナンド・トーレスも『キャプテン翼』が大好きでサッカーにのめり込んだという幼少期があり、翼を通して日本というイメージがあったのだと思います。実際、高橋先生が絵をプレゼントしたら、2人ともすごく喜んでくれました。

普通のクラブはスポンサー収入、チケット収入、放映権料、マーチャンダイジングの4つの収益に支えられますが、我々はそれ以外のところで『キャプテン翼』というものとコラボして、日本だけではなく世界中に対して働きかけられる大きな可能性のあるクラブだと思っています。

上のカテゴリーに上がった時には日本の中だけではなくグローバルにアジア、世界に出ていくクラブにしていきたい。

今年から、新たにリメイクした『キャプテン翼』のアニメも世界中で放映され始めていて、世界中に『キャプテン翼』のファンをさらに増やせるはずなので、そういう子供たちも含めて、『キャプテン翼』で育った選手を世界中から獲得できるようなクラブになるのが夢なんです」(岩本GM)

南葛SCの挑戦はまだまだ始まったばかりだ。

(文中敬称略)

菊池 康平 スポーツライター

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きくち こうへい / Kohei Kikuchi

プロサッカー選手を目指して学生時代と会社員時代の夏期休暇などを利用し12カ国に挑戦。会社を1年休んで挑んだ13カ国目のボリビアでプロ契約を果たす。飛び込みで現地のチームと交渉し、テストを受ける道場破りスタイルを得意とする。現在は16カ国でサッカーに挑戦した経験を夢先生などの活動を通して子どもたちに伝えている。アスリートへの就労支援、KING GEARなどでライター活動、専門学校の講師などにも従事。

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