アシックスが「サッカー強化」に挑戦する理由 イニエスタ選手と契約、世界2強追う新戦略
「世界でもトップレベルのシューズが出来上がったと感じている。ベストのプレーを見せたい」。10月22日に開かれた記者会見でサッカーJ1リーグ、ヴィッセル神戸のアンドレス・イニエスタ選手は朗らかな表情で語った。
スポーツ用品国内首位のアシックスは、10月からイニエスタ選手と新たにアドバイザリースタッフ契約を結んだ。契約内容はスパイクをはじめとするアシックス商品の使用、開発面でのアドバイス、広告宣伝・販売促進活動への協力だ。具体的な契約期間・金額は公表されていないが、複数年にわたる契約だという。
ナイキからスパイクを履き替え
イニエスタ選手は名実ともに世界トップクラスのサッカー選手だ。スペインの名門クラブ、FCバルセロナで16年間にわたってプレーし、2015年からはキャプテンも務めていた。今年5月にはヴィッセル神戸に電撃加入。今年6~7月にかけて開催されたロシアW杯を最後にスペイン代表からは引退したが、その影響力はいまだ絶大だ。
イニエスタ選手は使用するスパイクをナイキから履き替えることになる。アシックスを選んだ理由について「シューズの素材やテクノロジーなど、あらゆる面でサッカー選手のプレーを手助けするプロジェクトに加われるということに魅力を感じて決めた。これまで使っていたナイキからアシックスへの転換ということに大きな責任を感じている」と語った。
アシックスの尾山基会長は「世界のファンや市場に絶大な影響を持っているイニエスタ選手をサポートできることはたいへん光栄で喜ばしい。グルーバルでのサッカービジネスの拡大に、再度果敢に取り組んでまいりたい」と述べた。
アシックスがイニエスタ選手と契約を結んだ背景には、業績の伸び悩みがある。アシックスは欧米で中上級者向けのランニングシューズを武器に近年成長を続けてきた。2015年12月期には売上高4284億円となり、米ナイキ、独アディダスの世界2強に次ぐ3位グループにつけた。2020年までの中期経営計画では当初、売上高7500億円以上という目標を掲げた。
しかしその後、主力のアメリカ市場で中上級者向けのランニング市場の伸びが一服。ファッション性や楽しさを重視する入門者層向けに流行がシフトした。売上高は4000億円前後で停滞したことから今年2月、中計の売上高目標を5000億円以上に下方修正した。
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