アシックスが「サッカー強化」に挑戦する理由 イニエスタ選手と契約、世界2強追う新戦略

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アシックスの尾山基会長(右)は「サッカービジネスの拡大に挑む」と語る(撮影:今 祥雄)

現在も売上高の過半をランニングカテゴリーが占めるという構図は変わっていない。アシックスとしては、ランニング以外のカテゴリー強化が急務だ。

アシックスも、さまざまな手は打ってきた。ここ数年、ラグビーやテニスの市場開拓に注力。ラグビーでは、2014年から強豪の南アフリカ代表やオーストラリア代表にユニフォームを提供している。2015年のラグビーW杯では13カ国80名の選手にスパイクを提供した。テニスでは、今年からノバク・ジョコビッチ選手とシューズの契約を結んだ。次に目を付けたのが、市場規模の大きいサッカーだった。

アディダスとナイキが2強

世界のサッカー市場は2017年度で約1.4兆円(調査会社エヌピーディーグループ調べ)。リオネル・メッシ選手(スペイン・FCバルセロナ)らと契約する独アディダス、クリスティアーノ・ロナウド選手(伊・ユベントス)らと契約する米ナイキの2強が市場を分け合っている。ロシアW杯でも出場32カ国中アディダスは最多12カ国に、ナイキは10カ国と契約していた。さらに、2015年には米ニューバランスなど競合もサッカー市場に参入するなど競争は激化している。

アシックスがサッカー市場で存在感を示しているとは言いがたい。かつては日本代表やイタリアのクラブチームにユニフォームを提供したほか、フアン・セバスティアン・ベロン氏(アルゼンチン)、ロベルト・マンチーニ氏(イタリア)らと契約した実績がある。ただ、現在はヴィッセル神戸にユニフォームを、ロシアW杯に出場した大迫勇也選手(独ブレーメン)、乾貴士選手(スペイン・ベティス)にスパイクを提供している程度だ。

アシックスは手始めにイニエスタ選手が使用するスパイクを、直営店やオンラインストアなどで11月23日から数量限定販売する。イニエスタ選手は「(商品の開発に際して)しつこいと思われるほど意見を言った。アシックスは本当にすばらしい仕事をしてくれた」とスパイクの仕上がりに満足げだ。

スパイクの色はイニエスタ選手が所属するヴィッセル神戸のチームカラーに合わせた。素足感覚で履けるフィット性を重視。価格は1万8000円+税(撮影:今 祥雄)

尾山会長も「(サッカーやラグビーで使用する)クリーツシューズの商品開発を長年手掛け、高品質・高機能なものづくりの知見を培ってきた」とシューズの機能性には自信をみせる。

アシックスは来年もさまざまなサッカー商品の開発を予定しているという。イニエスタ選手を広告塔に据えることによって、状況を打破できるか。

【11月2日12:10追記】2ページ2段落目「2014年から強豪の南アフリカ代表やニュージーランド代表に」を「2014年から強豪の南アフリカ代表やオーストラリア代表に」、6段目「クリスシューズ」を「クリーツシューズ」にそれぞれ訂正いたします。

常盤 有未 東洋経済 記者

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ときわ ゆうみ / Yuumi Tokiwa

これまでに自動車タイヤ・部品、トラック、輸入車、楽器、スポーツ・アウトドア、コンビニ、外食、通販、美容家電業界を担当。

現在は『週刊東洋経済』編集部で特集の企画・編集を担当するとともに教育業界などを取材。週刊東洋経済臨時増刊『本当に強い大学』編集長。趣味はサッカー、ラーメン研究。休日はダンスフィットネス、フットサルにいそしむ。

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