過激な部活動が「ほどほど」にはならない理由 「やるか」「やめるか」の極論の前に考えたい

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いずれにしても「部活をやりたい先生」の意向だけが尊重されて、それ以外の先生が我慢して身体を壊したり、家庭の時間を取れなかったりする状況は、客観的に見ておかしい、と私は思います。

生徒からの期待

さらに議論を重ねていくと、より根深い問題がわかってきました。次に②生徒からの期待を見てみます。

ある県の公立高校では、校長先生によるトップダウンで、週末の部活は土日のどちらか片方だけに制限されることになりました。ある先生は、そのルールに従い、週末は土曜のみ、部活指導に充てていました。すると、部長を務める生徒から「私たちはもっと練習したい。大会で勝つためには、もっと練習が必要です」という直訴があったということです。

「生徒はかわいいし、やる気に応えてあげたい一方、私自身もきついのが実態でした。校長先生の方針だから、と説明しました」と先生は説明します。

ややこしいのは、生徒も一枚岩ではないこと。個別に話を聞いてみると、すべての部員が土日を丸1日潰して部活をやりたいわけではないこともわかったそうです。「声の大きな生徒に引っ張られがちですが、生徒の希望もいろいろあることがわかりました。本音を聞くのは難しいですが大切です」とその先生は話していました。

周囲に本音を言えない、という点では大人より10代の子どものほうが大変かもしれません。東京都八王子市で中学2年生の女の子が自殺に追い込まれる事件がありました。まだ原因は特定されていませんが、報道によれば、夏休みに部活を休んで家族旅行に出掛けたことを上級生からとがめられ、それがいじめにつながっていた可能性があるそうです。

ここまでの状況にならなくても、「みんなで頑張る」ことを是とする価値観や、それに加わらない人を排除する発想は、多くの部活で見られるのではないでしょうか。

筆者が中学生の時に入っていた部活でも、指導する先生が休みがちな生徒にいつも嫌みを言っていたことを思い出します。たとえば「今日は、いつもいないやつがいるから調子が出ないな」とか、「たまに来てその程度か」といった具合で、今の基準ではパワハラ発言になるでしょう。先生自身が放課後の時間と休日をすべて費やして部活指導をしていたことが、ほかの価値観を認められない狭い考えにつながっていたように思います。長時間労働の職場で上司が部下いびりをするのと同じ構図がここにあります。

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