「同じく独身の妹も含めて実家で4人暮らしをしていましたが、40歳を超えた姉妹がずっと実家にいて関係がうまくいくはずがありません。親は先にいなくなります。そのときにどうしよう?と不安でした」
美佐さんの趣味も音楽であり、サークル活動を楽しみながら結婚相手を探し続けていた。そのときに音楽会で見つけたのが康彦さんだったのだ。
「仕事帰りなのか社員証をストラップでぶら下げていて、ちゃんとした仕事に就いていることがわかりました。見た目もあり、です。この人いい!と思って話しかけてメールアドレスを教えてもらいました」
美佐さんは長年の婚活によって「相場観」が養われていたのだと筆者は思う。多種多様な独身男性とのお見合いを繰り返し、心が傷つくことも数え切れないほど経験し、「40代以上で独身の男性はどのような人が多いのか。どんな男性ならば自分は生理的に受け入れられるのか。その男性が自分を好きになってくれる可能性はどれぐらいあるのか」に関する独自データを積み重ねていたのだ。そのうえで康彦さんにアプローチをした。直感や一目惚れではない。
無事に連絡先交換に成功したが、不幸にも美佐さんはインフルエンザに罹ってしまった。康彦さんとの食事の約束も「ドタキャン」しなければならない。回復後、美佐さんのほうからメールでデートに誘ったが、「また改めて食事に行きませんか?」という文面が、康彦さんには「お誘いではなく質問」と受け取られて連絡が途絶えてしまう。共通の友人がいないこともあり、2人が再会できたのは1年半後のことだった。
「私がピアノサークルに入っているので、その演奏会に康彦くんを誘ったんです。2度も来てくれたのですが、距離はなかなか縮まりませんでした」
訪れた転機
ただし、康彦さんの内面には変化があった。音楽サークルの独身仲間(60歳)が結婚をすることになり、12歳年下の婚約者を紹介してくれたのだ。自分だけ置いて行かれてしまう気持ちになったと康彦さんは率直に告白する。
康彦さんのように実家暮らしの場合、寂しさを感じることは結婚へと向かうチャンスだと思う。そして、康彦さんはいい意味で非常識な男性だった。美佐さんとのほぼ初デートで、「僕のお母さんに会ってみない?」と誘ったのだ。婚約どころか告白すらしていない状態で何を考えていたのだろうか。
「母の習い事のお披露目会があったので、女友だちの一人として紹介しようかな、と思ったんです」
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