10月の株安局面で円高にならなかった理由 「リスクオフの円高」が試されるのはこれから

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国内勢の継続的な円売りも、円高を抑制している。

 

1つはM&Aの資金フロー。日本企業の海外企業買収が過去最大規模に膨らみ、外貨調達の円売り/外貨買いが活発に行われている。

財務省によると、今年1─8月の対外直接投資は累計で11兆3446億円。年間で過去最大を記録した昨年同期間の12兆8319億円とほぼ同じペースで推移している。

最近でも、三菱UFJ信託銀行が豪コモンウェルス銀行<CBA.AX>傘下の運用子会社を約3280億円で買収すると発表。カルソニックカンセイは親会社を通じ、フィアット・クライスラー・オートモービルズ<FCHA.MI>の部品部門を約8060億円で買収することを明らかにした。そのたびに市場では、円売りの思惑が駆け巡った。

生保など国内大手機関投資家の動きも、話題になっている。外債購入の際に為替変動リスクを手当てしたヘッジ付き外債から、為替ヘッジを外すための円売りが出ているという。

足元のドルヘッジコストは、3カ月物の年率換算で3%前後。10年米国債利回り<US10YT=RR>は3%前半まで上昇しているが、コストを支払うと金利収入はほとんど得られない。

保有外債の為替ヘッジを外すだけなら、金利収入を得ながらコストの削減が可能だ。上期に1000億円分のヘッジ外債をオープン外債へ振り替えた朝日生命保険は「ヘッジコストが上昇しているし、円高がどんどん進む局面でもない」(資産運用企画部長の鶴岡尚氏)として、下期も650億円程度の切り換えを行う予定だ。

「リスクオフの円高」試されるのはこれから

ただ、10月はドル高が進んだために、対ドルでは円高がさほど進まなかっただけの可能性もある。

堅調な米景気と上昇する米金利を背景に、ドル指数<.DXY>は10月に9月末比で2.0%上昇、1年4カ月ぶり高値圏に達した。米中貿易戦争への懸念が深刻化する中、市場では「最終的には相対的にでも、勝者となるであろう米国のドルを求める参加者が多い」(信託銀行)という。

クロス円では、ブラジルレアルやトルコリラなどを除いたほとんどの通貨で、10月に円高が進行した。実は、株安の度合いに比べて小さかっただけで、対ドルでも0.6%とわずかながら円高が進行している。

米金利上昇による株安圧力の高まりや、世界景気や企業収益の減速懸念、イタリア財政問題、英の欧州連合(EU)離脱の行方、サウジアラビアやトルコといった新興国の政治懸念など、年末にかけてもリスクは山積み。

10月は世界同時株安が進行したものの、新興国通貨やコモディティなどの下落は限定的だった。「10月のマーケットはリスクオフではなかった」(国内銀行)との見方もある。「リスクオフ時の円高」傾向は本当になくなったのか、試されるのはこれからだ。

(基太村真司、編集:伊賀大記)

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