リストラ社員が経営陣を射殺!! シリコンバレーを揺るがす解雇の嵐

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 解雇されたエンジニアが、社長、副社長、人事部トップ3人を銃殺するという事件がシリコンバレーで起った。、警察に捕まった47歳のエンジニア、ジング・ウー(Jing Wu)は、ワイアレス半導体のベンチャー企業SiPort(シポート)の元社員。3人の子供の父親であるウーは不動産投資に手を出し、17軒の不動産を持っている。しかし、このところの不動産市況の暴落ですべての計算が狂ったようだ。

 

自分で弁護士を雇えないほど資金繰りは苦しいようで、日本の国選弁護人に相当する米国の公共弁護士がついた。中国から米国に移民したウーは、不動産投資で子供の教育費などにあてようと資産運用を図ったことが裏目に出た様子。

そこへきて勤務先から「業績遂行能力不足」を理由に11月14日、解雇を言い渡された。彼はいったんシポート社を出て銃を忍ばせ、シッド・アグラワルCEO、副社長のブライアン・プグ、人事部のマリリン・ルイスに退職後の相談と面会を求め、同日午後4時、会議室で3人を射殺した。

この事件は、シリコンバレーに大きなショックを巻き起こしている。シポートは設立から4年たったベンチャー企業(社員総数38人)。だが、人と人とのネットワークが密接なシリコンバレーならではの、数々のお悔やみや、安全なリストラ方法の提案が、インターネットにアップされている。

例えば「半導体企業のベンチャーは多くの資金と人材を必要とするから、事業を立ち上げるのは簡単ではない。そんななかで仕事と産業を作り出した素晴らしい人たちを失ってしまった」という嘆きの声が、リンという女性から寄せられている。

彼女は、シポート副社長のプグと同じカリフォルニア大バークレーの物理学教室に通い、社長のアグラワルともスタートアップの会合で知り合いだった。また、会社のセキュリティを改善し、惨劇を防ぐために社員にIDを持たせ、入出管理するという提案がロビンから出されている。

クビにした従業員に殺されないために...

日本でも1999年3月、リストラに抗議して、ブリヂストン社長室に元社員が立てこもり、割腹自殺した事件があった。だが、レイオフが続くシリコンバレーではもっと深刻で、管理職たちは今回の事件に強い危機感を抱いている。

サン・マイクロシステムズが6000人、アプライドマテリアルズが1800人、ヤフーが1500人、イーベイが1000人など、多くの企業が人員削減し、グーグルさえも雇用を減らしている。今回の景気後退は2000年初頭のITバブル崩壊より深刻なのではと危惧するアナリストもいる。

バブル崩壊時にはシリコンバレーの雇用が5分の1が消えてしまったことを考えると、これから人員削減が本格化していくのだろう。人事部の人員が少ないベンチャー企業や、日本からシリコンバレー進出した現地法人や駐在事務所は、雇用削減に当たってどのような対策を取ればよいのだろうか。

あるベンチャー企業の社長、人事担当副社長に聞いてみた。

 「うちは総社員数が50人以下で、人事部にそれほど人を割けない。レイオフ専門のセキュリティ・コンサルタントや場合によっては心理学のカウンセラーを雇う」とは社長の弁。解雇する時にはこれまでより時間をかけ、レイオフの理由を話すという。

 人事担当副社長は「今回の事件が起ってから一律な解雇方針を大急ぎで作成中だ。選択的ではない解雇という形を明確にし、逆恨みされないようにするのが目的。また、解雇した者が就職活動できない週末に怒りが心頭する恐れがあるので、原則的に金曜日には解雇しない。さらに解雇した後の社員の入出は厳しく管理していくシステムも作る」。

大企業では、半導体のインテルが1万人を超える人員削減を2年かけて組織的に行った例がある。銃社会のアメリカ。人員解雇も命がけだ。ますます深刻化しそうな不況の中、経営陣は徹底した危機管理を怠らないようにと警告するような事件だった。
(Ayako Jacobsson =東洋経済オンライン)

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