淘汰の季節迎えた外国為替証拠金取引、深手を負った投資家が官製市場になびく

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だが、取り扱い通貨の少なさや取引の仕組みが融通を欠いていたこともあり、取引所取引は思ったほど伸びなかった。08年3月末時点の口座数では、FX店頭の約95%に対して、くりっく365は5%強にとどまっていた(金融先物取引業協会調べ)。店頭取引では、顧客資産の流用や詐欺まがいの行為が後を絶たない一方、取り扱い通貨の多さや約定の仕方など取引の工夫、あるいは高レバレッジが顧客を呼び寄せ、急拡大を続けていったためだ。

しかし、サブプライムローン破綻をきっかけにした国際的な金融システムの大混乱や急激な円高で、FXの顧客の多くが損失を被った。また、業者も大きな痛手を受けた。12月1日付での廃業を発表したトレイダーズFXは、「カバー先」と呼ばれる注文を出す相手の一社にリーマン・ブラザーズが含まれていたことが命取りになった。同社の場合、顧客の証拠金をリーマンに預託していたために貸し倒れが起きた。

こうした事態を踏まえ、金融庁は顧客の証拠金の分別管理の徹底を図る考えを明確にした。具体的にはカバー先への預託を禁止し、信託保全へ一本化するための改正法案提出を検討している。また、財務省は主婦の脱税で明らかになった申告漏れをなくすために、09年の取引からは、店頭取引にも取引履歴を明示した支払い調書の提出を義務づけた。

先立つ07年11月以降、証券取引等監視委員会が、FX業者に対して重点的に検査を実施。臨店検査を行った73社のうち、7社に対して重大な問題が認められたとして、行政処分を求める勧告を行った。

このようにFX業者への監督が強まる一方で浮上したのが、税制の二本立てという問題だ。すでにFX業者の一部が、06年から税制の一本化を求める要望を金融庁に提出している。07年には上位企業など19社が金融庁長官宛てに「一本化」に関する要望書を提出。最近では自民党税制調査会にも税制改正の実現を働きかけている。

業界団体ないFX業界

だが、一本化の道は遠いのが実情だ。金融庁の担当者は「FXの一部企業から要望が出ているのは事実。しかし、業界全体の総意か否かをつかめていない」と語る。そして「税制改正要望は業界団体などを通じて上がってくるのが通常」と続ける。同担当者は「問題点を整理する必要がある」としつつも、「証券税制への対応で手が回らない」とも言う。

FX業界にとって不幸なのは、業界の意見を取りまとめる組織が存在しないことだ。FXを含む金融先物取引に関する自主規制団体としては金融先物取引業協会があるが、「業界団体ではないので税制要望を出す考えはない」(同協会)という。

また、FX業者は玉石混淆であるうえ、ライバル関係にある取引所取引に参加する企業もあり、「足並みがそろわないのが実情」(業界幹部)という。

店頭取引を取りやめて取引所取引に移行する方法もあるが、「取引所の傘下に入ると、独自の商品開発やシステムの整備もできなくなる。取引所の支店になるのに等しい」(大手幹部)という警戒心も根強い。

金融税制に詳しい森信茂樹・中央大学法科大学院教授は、「資本に対する効率的な税制の構築は世界の流れであり、金融商品ごとに税の扱いが異なるのは望ましくない。だが、ほかの金融商品と同列に扱われるためには、業界の信認確立が不可欠。店頭FXが取引所並みの扱いを受けるには相当の努力が必要」と指摘する。

ひたすら成長だけを追い求めてきたFX業界は厳しい試練の時を迎えている。

(岡田広行 =週刊東洋経済)

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