「アメとムチ」は実は人のやる気を破壊する 「営業成績が下がったら××」の脅しは逆効果

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

しかしながら、この方法は長くは続きません。人は、お金をもらうことや称賛されることには、すぐに慣れてしまう生き物です。やる気を促すためのアメの正しい与え方としては、次のことを実行しなければなりません。

・アメは1回与えたら、永久に渡し続ける
・アメは、グレードアップさせ続ける
・アメを渡すタイミングを、どんどん早めていく

このように、アメを与え続けるにも、難しいコツやテクニックが重要となります。しかも、それだけでなく、アメを与えることの弊害も指摘されています。

たとえば、純粋にパズルを楽しんでいた学生たちに、パズルを解くたびに報酬を与えるようにすると、そのパズルへの関心は一気に冷めてしまうことが実験で確かめられています。

より「やる気」を出すかと思われたインセンティブによって、逆に「やる気」をそいでしまうことがあるという点には注意を払わなければなりません。

つまり、人間とはお金のため、ご褒美のために頑張るのは、本当は「キライ」なのではないでしょうか。どんなに無気力に見える人であっても、心の奥底では「自分の意思で」「自分の気持ちで」何かに取り組みたい、頑張ってみたいと願っているもの。その本質的な意欲を、アメを使ってそぎ落とすようなことがあってはならないのです。

ムチはもっと難しい

また、アメを与えることでさえこれほど難しいのですから、ムチについては、より一層の困難が待ち構えています。ムチの特徴は、次のとおりとなります。

・ストレスがかかる割には、情報は伝わらない
・アフター・フォローが万全であれば、ムチの効果は出てくる
・乱発すると、相手はまったく動かなくなる

ムチとは、具体的には「ビシッとしかる」「バシッとたたく」「怒鳴りつける」などですが、それにより相手が学ぶのは、「あ、間違えた」「これじゃダメなのか」ということだけです。

このため、ムチを与える際は、「どうすればよかったのか」「どうやったらうまくいくのか」といった十分なフォローアップがなされないと、痛み以外の意味を与えません。

また、何度もその痛みを受けていると、「怒鳴られるとイヤだから、一切黙っておく」「たたかれると痛いから、目立たないようにする」という恐怖感はもちろん、無気力な性格を醸成してしまうこともあるのです。

次ページ意欲に満ちた人へと導くのにアメとムチは不向き
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事