「飲酒量が多いほど」生涯未婚率が高まる事情 酒と結婚は切っても切れない深い関係がある

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こうした相関があるからといってそこに因果を求めてはいけません。人間は因果的推論の天才です。相関があると必ずそれを因果として結び付けてしまおうとしがちです。「夜の料飲店売り上げが減った。そして結婚も減った」とは言えても、「夜の料飲店売り上げが減ったから結婚が減った」とは言えないし、「結婚が減ったのは、みんなが外で酒を飲まなくなったせいだ」とはとても言えないわけです。

しかし、婚姻数の減少と景気の低迷とは大きな関係があります。今のように「金がなくて結婚できない」と嘆く若者を生み出したのも、バブル崩壊以降サラリーマンの平均給料は右肩下がりに下がり続けたからです。未婚化は、そういった経済的要因と無関係ではないですし、景気の先行き不安から「結婚なんてとてもできない」と未婚男性たちを消極的にさせてしまったことも事実です。

20年で生涯未婚率は5倍に増加

同様に、料飲店売り上げが縮小したのもバブル崩壊に伴う景気の後退であり、何より大きいのは、企業の接待交際費の締め付けです。財務省によると、企業の接待費は1993年度から2015年度にかけての約20年間で半減しました。男の生涯未婚率が5%をはじめて超えたのが1995年。酒の消費量や料飲店の売り上げが下降し始めた時と合致します。その後、20年余りで生涯未婚率は5倍に膨れ上がりました。

「酒と結婚」の相関性というより、「酒と景気」「景気と結婚」の相関と考えるべきでしょう。景気が悪ければ、男女とも夜遊びにも出かけなくなります。1980年代後半から1990年代前半にかけて、ドラマや歌で恋愛ブーム的なことが起きたのも、どちらかと言えば、好景気に伴う高揚感が恋愛に波及しただけとも考えられます。

『デートで「おごられたい」女性は実は少数派だ』という記事でも書きましたが、「男がおごるべき」という規範に縛られているのはむしろ未婚男性のほうです。そんなプレッシャーを受けつつ、自分の財布と相談した結果「デートすら誘えない」状況を招き、男たちが沈黙していったのがこの平成30年の歴史だったのです。そうして女性たちは、家でソロ飲みする機会が増えてしまった。

そもそも、「ソト飲み」はデートやグループで行くべきだという呪縛から解放される時期にきているのかもしれません。『「お1人様」主義者はどこまで1人でOKなのか』という記事でソロ男女の「1人○○」度合をご紹介しましたが、あれから1年後の2018年ソロもんラボ調査では、「ひとり居酒屋」「ひとり焼肉」などの利用度は男女とも50%を超えました。

店側でも「お1人様歓迎」シールを貼る店が増え、全日本1人呑み協会では「毎月11日はヒトリノミの日」として参加店舗を募集する活動をしています。「お1人様限定バー」などソロ活に対応したサービスも続々生まれています。

都心部ではもはやマジョリティとなりつつあるソロたちの「ソロソト飲み」の定番化こそ、ナイトタイムエコノミーの活性につながるのではないでしょうか。ちなみに、私は「独身の単独入店限定」という「スナックぼっち」を不定期に開催しています。入店する時は、当然全員「ぼっち」ですが、帰る時はほぼ全員が誰かとつながって一緒に帰っていきます。「ソロソト飲み」は、逆説的ですが人とつながる良い機会になると思います。

荒川 和久 独身研究家、コラムニスト

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あらかわ かずひさ / Kazuhisa Arakawa

ソロ社会および独身男女の行動や消費を研究する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー携書)(ディスカヴァー携書)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、がある。

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