トヨタ「15代目クラウン」に滲み出る深謀遠慮

欧州勢との競争、ユーザー高齢化への悩み

五味:それが日本車の高級セダンにおける最大の欠点で、最も大きな足かせといえます。ヨーロッパのメルセデス・ベンツ、BMW、アウディが世界で販売している高級セダンの販売台数と、日本車の高級セダンの販売台数は相当開きがある。だから開発費にかけられるコストがまったく違う。欧州勢の高級セダンはフルモデルチェンジのたびにプラットフォームから刷新できても、日本の高級セダンは台数が出せないから、お金をかけるのが難しいんですね。

山本:そもそもクラウンは一部を除いて国内専用車ですからね。

五味:どうやっても数で勝てない。数で勝てない限り、クルマづくりでは絶対的に不利な状況にはありますね。

トヨタの高級車としてのクラウンの役割

――乗ってみての感想は?

塩見:発売前にモーターショーなどで見たときの印象は、すごくかっこよかった。「ついにクラウンが(BMW)5シリーズになってしまう」と、すごく自分の中でもハードルが上がりました。でも試乗してみたら「そんなびっくりするほどじゃないな」と。1つ前の世代のクラウンに比べたらずいぶん進化していますが。

山本シンヤ(やまもと しんや)/自動車研究家。自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車雑誌の世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の気持ちを“わかりやすく上手”に伝えることをモットーに「自動車研究家」を名乗って活動。数々の海外取材で経験した「世界の自動車事情」、元エンジニアの経験を活かした「最先端技術」、編集者時代に培った「ドライビングメカニズム」などを得意とするが、モータースポーツや旧車事情、B級ネタもカバーするなど、ジャンルは「広く深く」。エンジニアの心を開かせ「本音」を引き出させる能力も長ける。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員(撮影:尾形文繁)

山本:クラウンに対して何を求めるかですね。昔のいわゆるベタな高級車像からみれば、全然、別の車と言ってもいいです。しかし、クラウンが今までそのイメージから変わらずにいた結果、今の販売台数になっています。ユーザーの高齢化も含めて、どこかでガラッと大きく変える必要があったのでしょう。

僕は15代目クラウンは、もっとデザインをドラスティックに変化させても良かったかなと思っています。どう変わってもクラウンを乗り継いでいる人は買いますから。仮にクラウンがミニバンになっても、SUVになってもです。

塩見:「いつかはクラウン」と言っていた時代がかつてありましたが、その頃は、メルセデスやBMWの価格はクラウンよりもはるか高く、2倍以上の値をつけるようなこともありました。日本人が買える車のトップにクラウンがあったんです。

でも今は、トヨタにもレクサスがあるわけです。トヨタの高級車としてクラウンの役割を考えると、まだお客さんはたくさんいるから、急にやめるわけには当然いかない。その扱いにトヨタの悩みもあるはずです。

――クラウンはたとえば20代目まで続くのでしょうか。

塩見:その頃にはまったく違うクラウンとして出てくるのかもしれない。昔のように出世するごとに、カローラから、コロナ、マークⅡ、クラウンと車格が上のクルマにジャンプアップしていく時代は、とっくに終わっています。

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