トヨタ「15代目クラウン」に滲み出る深謀遠慮 欧州勢との競争、ユーザー高齢化への悩み

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――地方都市では事情が違うかもしれませんが、東京都内で見かけるC-HRは、50~60代以上とみられるシニア男性がドライバーであるケースはとても多いです。

塩見智(しおみ さとし)/ライター、エディター。1972年岡山県生まれ。関西学院大学卒業後、山陽新聞社、『ベストカー』編集部、『NAVI』編集部を経て、フリーランスのエディター/ライターへ。専門的で堅苦しく難しいテーマをできるだけ平易に面白く表現することを信条とする。自動車専門誌、ライフスタイル誌、ウェブサイトなど、さまざまなメディアへ寄稿中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員(撮影:尾形文繁)

塩見:そうですよね。C-HRはプリウスのクーペ版と言ってもいいような存在です。

五味:自動車メーカーの新車開発には、3~7年ぐらいの時間がかかるといわれています。その開発当初に数年後の発売時の市場をどれだけ予想できているか。当然ちょっとの誤差は出ます。数年前の感覚だったら、C-HRは若者にしか売れなかったようなデザインかもしれない。でも、トヨタがC-HRを開発している間に、市場はものすごく変化しました。シニア層もアグレッシブというか、若返りしてきていますから。

だから、15代目に当たる新型クラウンがアスリートとロイヤルをなくして1本化したのは、挑戦ではありますがある意味当然でもあります。

山本:「走りはアスリート」「乗り心地はロイヤル」って分ける必要もなくなっている。

五味:技術進化とともに世界感も変わっており、世界のスポーツカーでも最高峰に近い「ポルシェ 911 GT3」なんて、半端なく速いのに、乗り心地がいいんですね。かつてのスポーツカーを知っている人からすると、驚くはずです。

14代目と15代目の違い

――スポーツカーといえば、ゴツゴツした乗り味の代わりに速さを得ている印象でしたが、今は乗り心地と走りが技術的に両立できるのですね。

五味康隆(ごみ やすたか)/モータージャーナリスト。自転車のトライアル競技で世界選手権に出場し、4輪レースへ転向。全日本F3選手権に4年間参戦した後、モータージャーナリストとしての執筆活動を開始。高い運転技術に裏付けされた評論と、表現のわかりやすさには定評がある。「持続可能な楽しく安全な交通社会への貢献」をモットーとし、積極的に各種安全運転スクールにおける講師を務めるなど、執筆活動を超えた分野にもかかわる。また、環境分野への取り組みにも力を入れており、自身で電気自動車やハイブリッド車も所有(撮影:尾形文繁)

五味:昔と比べたら、タイヤがかなり進化しています。電子制御サスペンションも出てきている。それとボディには硬さだけでなく“いなし”の発想も入ってきています。乗り味の調整幅はかなり広いのではないでしょうか。

塩見:タイヤもかつては扁平率(タイヤの断面幅に対する断面の厚さ)が高く、横から見て薄いタイヤは、露骨にゴツゴツした乗り心地でしたが、最近はそうでもなくなってきています。クルマの足回りについて、10年前の常識で考えていると今は全然違います。

五味:ボディはほんと良くなりましたね。ショックアブソーバーやスプリングなど足回りの部品がちゃんと機能して衝撃を吸収するようになっていて、今は減衰力が効きづらいのはタイヤの振動ぐらいです。

――15代目クラウンを、1つ前の世代から比べると?

山本:14代目クラウンといえば、あのイナズマグリルのピンクカラーで話題になりました。でも基本的には、2003年に登場した「ゼロクラウン」と呼ばれていたモデルのプラットフォーム(車台)をベースに、ブラッシュアップしたクルマともいえました。ズバリ基本設計が古かったということですね。対して15代目クラウンは、プラットフォームから刷新しました。

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