つまり、絵を描く時間が終了してからも、メダルのことを聞かなかった子どもたちの中には絵を描き続ける子がたくさんいましたが、メダルを約束された子どもたちは終了と同時に絵を描かなくなりました。彼らは、無意識のうちに「大人がご褒美をくれるのは、子どもに嫌なことをさせたいときだけだ。今、絵を描いたらメダルをくれると言った。だから絵を描くのはきっと嫌なことなんだ」と考えたのです
同書には、この他にも数々の興味深い実験が紹介されています。それらをつぶさに検討した後、ワイズマンは「子どもにいくら報酬を与えても、結果としては彼らにそれが嫌なことであるかのように行動させてしまう。そのため、報酬が出されなくなると同時に、目的の行動は終わりを告げるか、以前より状態が悪化する」と結論づけています。
一つひとつ積み重ねていくことが大切
以上のように、子どものころから、「お金をもらうために勉強する」「ご褒美がもらいたいから縄跳びの練習をする」などの生き方を身に付けさせるのは危険です。そうではなく、勉強自体の面白さを味わえるようにしてあげること、縄跳びの練習自体を楽しめるようにしてあげること、そして、できるようになったこと自体を喜べるようにしてあげることなどが大切です。
そのためには、子どものちょっとしたがんばりを褒めてあげることや、ほんの少しの成長を一緒に喜んであげることなど、「親にできること」を誠実に積み重ねることが大事であり、これが子育ての正しい道です。手っ取り早い効果を求めて間違った近道を選ぶと、後で弊害に直面することになります。なお、「親にできること」については、本連載でも度々書いていますのでご参考にしてください。
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