「つながる家電」化は白モノ家電を救うのか 加速する家電のIoT化、その可能性と限界

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つながる家電化は技術的にはそれほど難しくはない。にもかかわらず、各社が慎重なのはコストアップ要因になるからだ。そのコストはユーザーか、メーカーのどちらかが負担しなければならない。ユーザーがつながる家電に魅力を感じなければ、店頭価格は下がっていき、メーカーの利益を圧迫する。そこまでして、つながる家電化を進めるべきか、悩ましい。

つながる家電が普及しても、新たな課題が生まれる。つないだ先に何らかのサービスを用意する必要があるからだ。無料のサービスは、メーカーにとってコスト負担でしかない。有料化できればいいが、ユーザーに受け入れられるサービスを提案できるかは今後の課題だ。

つながる家電化に最も積極的なのがシャープだ。エアコンや洗濯機、電子レンジ「ヘルシオ」から自動調理鍋まで、幅広い製品群にネット接続機能を持たせている。エアコンは最上位機種だけでなく、普及価格帯でも無線LANを内蔵している。

難しい冷蔵庫の「つながる化」

ただでさえ、ネットにつながるメリットを打ち出しにくい白モノ家電の中で、各社が頭を悩ませているのが冷蔵庫だ。2013年には東芝ライフスタイルが別売りカメラで庫内にある食品を確認できる機能を打ち出したが、ほとんど受け入れられなかった。シャープは冷蔵庫でも果敢につながる家電化を進めている。

つながる家電に最も積極的なシャープが手掛ける「つながる洗濯機」(写真:シャープ)

メニューの提案や食材保存のアドバイスに始まり、冷蔵庫の使い方のクイズもある。「クイズなんて本当にいるのかという声が社内にあったが、意外に使われていることがわかった。ユーザーの利用状況を今後のサービス開発に生かしていきたい」(シャープの冷蔵庫の開発担当者)と前向きだ。

ライバル社からは「あんな挑戦が許されるのはシャープさんらしい。うらやましい部分もある」という声があがる。もともと「目のつけどころ」を強みとするシャープは実験的な商品企画力に定評がある。つながる家電に関しては、無線LANや音声対話の機能を標準モジュール化して製品横断で展開。さらに同モジュールの外販も進めている。量産効果でコストを下げることで、つながる家電を加速する戦略だ。

国内の白モノ家電市場は成熟化し、メーカー各社は「つながる化」に商機を見出そうとしているが、勝者は生まれるのか。その帰趨はまだ見えない。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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