JR東海「テキサス新幹線」スペインとコラボへ 資金面で不安要素残るが、実現へ一歩前進

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TCRのカルロス・アギラールCEOは「世界最高の運行会社の中からレンフェを選んだ」と、絶賛するが、日本でも大きく報道された2013年にスペイン国内で起きた高速鉄道事故については留意しておく必要があるだろう。高速列車の運転士が携帯電話で会話したまま高速でカーブに突入し、曲がり切れなかったのが事故の原因だ。

この点について、JR東海は「技術支援には車両のようなハード面だけでなく、運行業務のようなソフト面も含まれる。安全、安定運行のために全面的に協力したい」と言う。台湾高速鉄道の運行業務にもJR 東海のノウハウがふんだんに取り入れられており、テキサスではレンフェとJR東海のコラボレーションが見られるかもしれない。

資金集めに課題残る

2009年の試験運行。表示は時速331km(記者撮影)

問題は120億ドル(1兆3500億円)以上とされる建設費をどう調達するかだ。しかし、計画のプレイヤーが固まってきたことで、資金集めが軌道に乗る可能性はある。

JR東海は2009年に世界各国の政府関係者を招き、N700系の量産先行試作車を使って米原―京都間で最高時速332kmの試験運行を行っている。この列車にはテキサス高速鉄道交通協会の会長も乗車しており、「とてもスムーズな乗り心地」と絶賛していた。ただ、その後、「実は高速列車に乗ったのは初めて」と明かした。テキサス州では高速鉄道に乗ったことがある人は決して多くないだろう。多くのテキサス人が高速鉄道に驚く日はいつ訪れるのだろうか。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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