日経平均3万円・上昇終了、どっちが正しい? 今は「上げに浮かれず」「下げを恐れず」の局面

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それらを踏まえたこれからの投資戦略だが、2008年のリーマンショックで世界経済は一度リセットされ、新しい世界がスタートしたと考えられる。

その新しい世界の現状を、安値だった2009年3月の株価と今年の高値を比べて見ると、アメリカ(NYダウ)約4倍、ドイツ(DAX)約3.5倍、日本(日経平均は約2.8倍、TOPIX=東証株価指数約2.5倍)、中国(上海総合)約1.2倍となる。

直近では、ドイツDAXの調整安と日経平均の急騰で、日独の株価はほぼイーブンとなった。しかしTOPIXの出遅れは依然として続いている。狙い目はこのTOPIXだ。2012年以降の9月末と11月末のTOPIXの値を比べて見ると、全6年すべてで9月末より11月末が高くなっている。その上昇率は5.4%(2013年)~12.0%(2015年)だ。2016年の上昇率も2ケタだった。

この理由はひとことで言えば、アベノミクスだと考えられる。毎年11月の時期は補正予算や、次年度の拡大予算を材料に上昇しやすい。また、稼ぐ力のついた日本企業の通期決算への上方修正が出たためもあると思われる。

「買えないところで買う」のが相場の極意

では2018年の今年はどうか?米中貿易摩擦の懸念はあるが、補正予算や2019年度拡大予算については「安倍3選」ですでに期待が高い。また企業業績も現在の1ドル=113円台(先週末現在)と直近の日銀短観大企業製造業想定レートである1ドル=107円40銭の差を考えると、増額修正ラッシュさえ考えられる。

しかも10月5日現在の日経平均EPS(1株益)は1732円だが、5%程度の最終増益を考えると優に1800円を超える。「第1次アベノミクス相場」(2013年1月~2015年6月24日と設定)の平均PER(株価収益率)は約16.1倍だった。

その後(2015年6月25日~2018年9月末)の平均は同14.5倍だが仮にEPS1800円を基準に前者16.1倍なら2万9000円。後者14.5倍でも2万6100円。一方、9月末のTOPIXは1817ポイント(日経平均2万4120円)だったが、6年間で最低の「5.4%上昇」を適用しても11月は1915ポイントとなる。現在のNT倍率13.27倍で計算すると(今後は少し低下すると予想するが)、11月末の日経平均は2万5412円だ。

さらに、6年間のこの時期のTOPIX上昇のリード役となったのが、業種別では「電気機器」だったというのが極めて面白い。毎年5.4%~12.0%以上の上昇だった。現在「電気機器」は買えない業種の1つで、ソニーやTDK等1部の銘柄を除き惨憺たる株価だ。日本を担っていると言っても過言ではないファナックや東京エレクトロンの下げはきつく、京セラ、アドバンテストも全く冴えない。「買えないところで買う」のが相場の極意。筆者は、ここは狙い目ではないかと思っている。以上を総合的に勘案して、今週の日経平均株価予想レンジは2万3350円~2万4200円とする。

平野 憲一 ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト

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ひらの けんいち

日本証券アナリスト協会検定会員。株一筋約45年。歴史を今に生かすことのできる「貴重なストラテジスト」として、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌への出演や寄稿記事多数。的確な予想で知られ、個人投資家の間には熱烈な「平野ファン」がいることでも有名。1970年に立花証券入社以来、個人営業、法人営業、株ディーラーを経て、2000年情報企画部長マーケットアナリストとして、投資家や各メディアに対してマーケット情報発信をスタート。2006年執行役員、2012年顧問就任。2014年に個人事務所ケイ・アセット代表。独立後も、丁寧でわかりやすい解説を目指す。

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