給与即日支払いで激変する「給与2.0」の世界 「月末締め、翌月払い」の給与制度は昔のまま
「月末締め翌月払いという仕組みは、戦後の日本が製造業を中心に発展してきたという背景があります。国や会社など“大きなもの”に逆らわない気質の日本人は、戦後70年以上も黙ってそれを受け入れてきました。日本人は受動的すぎるんです。
個人の力が強い国でそんな制度を導入したら、みんなすぐに会社を辞めてしまうでしょう。例えばアメリカでは給与は2週間に一度のチェック(小切手)払いか、当月払いが基本。給与制度一つとっても、個人と企業が対等な立場なんです」
そんな時代の変化を読み解く後藤さんが、2017年11月にリリースしたのが、給与即日支払いサービス『Payme』だ。自分がその日までに働いた給与の7割までを、アプリを通じて申請できて、最短で即日に受け取れるという。
借金ではなく、あくまでも自分の給与の一部なので、後から返す必要もない。
「この先働き方が変わっていくなら、給与だって変化していかなければいけません。『Payme』で支払いまでの大きなタイムラグをなくし、給与の自由化を実現できれば、世の中のさまざまな機会損失をなくせると考えています」
自分の“生き様”がスコア化されて信用になる
こうした給与即日払いサービスの提供だけなく、「働く」と「給与」をすべてデータ化し、若年層のキャリア形成を助ける新しい手段を考えたいと後藤さんは語る。
「中国では既に、個人データがスコアとして可視化され、交友関係や消費行動が与信項目になっています。
これから先、日本でもお金にまつわるデータが個人の信用情報として蓄積されるようになるはず。
ユーザーがいつどこで働き、どのくらいお金を使っているか、そうした情報がクレジットカードや不動産購入、賃貸の際の与信情報になり得るのです」
給与を中心に、生きていくことがまるごと自分の信用スコアになる。後藤さんが考える【給与2.0】の世界では、お金に関する不正やおかしな慣習も、是正されていくようになるのかもしれない。
また、後藤さんが見据える未来では、より「個人」の力や、「今まで積み重ねてきた生き様」が試されることになるという。
「今は20代の2人に1人が“貯蓄ゼロ”の時代です。つまり、若者たちはお金がない。20代後半の正社員でも、友達の結婚式ラッシュをきっかけに“パパ活”デビューする女性や、生活に困っているわけでもないのにクレジットカードの支払いに月の給与の大半を使っている大手企業の会社員もざらにいます。でも、給与を自分のタイミングで自由に使えるようになったらそうした問題を解消できると思うんですよ」
後藤さんは「お金を理由にあきらめないカルチャーを生み出すことで社会を変えて、将来はノーベル賞を獲りたい」と話す。その眼差しは、真剣そのものだった。
国や会社が自分の将来を保証してくれる、強いものにぶらさがっていればいい、という時代は終わる。自分らしい働き方を見つけていきながら、働いた対価をどのように受け取り、使うのか。一人一人が考えていきたい。
(取材・文:石川香苗子)
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