「無名」のハナコがコント王者に輝いた決定打 ずば抜けた表現力で「犬を演じる」岡部の功績

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このように、ハナコの1本目のコントは設定に革新的な新しさがある傑作だった。しかし、チョコレートプラネット、わらふぢなるおが1本目で演じたのも、別の意味で画期的なコントだったため、三者が拮抗することになり、勝負は2本目に持ち越された。

「非現実な世界観」に振り切った2本目のコント

ハナコの2本目のコントは、制服を着た男子学生と女子学生が波打ち際でふざけ合うシーンから始まる。女子学生が男子学生に「私のこと、つかまえて」と声をかけて、駆け出していく。男子学生はあとを追って走り出すのだが、女子学生が全力疾走を続けていて、いつまで経っても追いつけない。ここから両者の追いかけっこが延々と続いていく。

1本目のコントが現実そのものを丁寧に描くネタだったのに対して、2本目はマンガっぽい非現実的な世界を描くものだった。こちらのネタでも核になっているのは、得体の知れない女子学生を演じる岡部の演技力である。彼女が何を考えているのかわからない、ということだけでどこまでもネタを引っ張り、最後にようやく追いつかれた女子学生は男子学生にキスをせがむ。男子学生が「女子ムズッ!」と叫び、彼女の訳のわからない行動を「女の子の考えることはよくわからない」という一般論に無理やり落とし込んで、ネタが締めくくられる。心地よい余韻が残る見事な結末だ。

チョコレートプラネット、わらふぢなるおが1本目よりも落ちる印象を与えてしまったのに対して、ハナコは1本目に負けないくらいのコントを演じて、高得点を獲得した。

ハナコは今年2月に事務所内で争われた『ワタナベお笑いNo.1決定戦2018』でも優勝するなど、その実力は業界内ではすでに知られていた。今回の『キングオブコント』で彼らが披露した2本のネタは、それぞれ「どこまでも現実をなぞるもの」と「どこまでも非現実の世界に飛躍していくもの」という対照的な特徴を持っていた。2本のコントで自分たちの芸の幅の広さを見せられたのが優勝という結果につながったのではないかと思う。

ラリー遠田 作家・ライター、お笑い評論家

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らりーとおだ / Larry Tooda

主にお笑いに関する評論、執筆、インタビュー取材、コメント提供、講演、イベント企画・出演などを手がける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)など著書多数。

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