2007年度に全国の労働基準監督署が賃金不払い残業(いわゆるサービス残業)として是正を指導し、100万円以上の割増賃金を支払った企業は1728社、対象労働者約18万人、支払われた所定労働時間外賃金総額は272億円(労働者1人当たり15万円)に上り、企業数・支払総額はデータの得られる01年以降では最多となった。もっとも、これらは労働者本人やその家族からの相談等に基づくもので、氷山の一角と見てよいだろう。
賃金不払いという違法行為の解消は当然だが、経済効果という点からは、サービス残業の解消を雇用情勢・所得環境の改善に結びつけることが求められる。
全労連系の労働運動総合研究所の試算によると、一般労働者(従業員30人以上の事業所が対象)の年間総サービス残業時間は24億1436万時間。この分の労働を新たに雇用される労働者が担うとすると、118万8000人の雇用が創出されることになる。増加労働者がすべて正規雇用の場合、賃金総額の増加は5.8兆円で、生産波及効果を含めるとGDPを0.7%押し上げることになる。日本経済の足腰の強化につながる一過性ではない有望な景気対策といえる。
なお、こうしたサービス残業の解消は企業にとっては労働コスト増につながるが、同研究所ではこの10年間の賃金切り下げと内部留保の増加に照らし、そうした経費は十分賄えると見ている。
(『東洋経済 統計月報』編集部)
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