みずほ問題で迫られる、金融庁の体制見直し 金融庁にも批判の矛先、

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11月13日、みずほ銀行が傘下の信販会社を通じ暴力団組員らに融資し、それを放置していた問題が金融庁にも飛び火する様相となった。都内で5日撮影(2013年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 13日 ロイター] -みずほ銀行が傘下の信販会社を通じ暴力団組員らに融資し、それを放置していた問題は、金融庁にも飛び火する様相となった。

みずほ銀頭取らを参考人招致した13日の衆院財務金融委員会の集中審議で、みずほの誤った報告を見抜けなかった金融庁にも厳しい批判が与野党からわき上がった。金融庁検査の体制見直しを求める意見も指摘され、金融庁は難しい対応を迫られそうだ。

「緊張感のない無意味な検査ではないか。金融庁と銀行の間に慣れ合いや緊張感の欠如が生じていたのではないか」──。同日午後の集中審議で生活の党の鈴木克昌委員は、金融庁の検査対応について厳しく追求した。質問に立った議員らが問題視したのは、みずほが当初の検査に対して誤った報告をしていたのに対し、金融庁が見抜けなかった点だ。

みずほは当初、問題融資の情報が担当役員にまでしか上がっていなかったと報告。これに基づいて金融庁は9月末に業務改善命令を出していた。

だが、その後の社内調査の結果、みずほは一転、当時の頭取まで報告が上がっていたことを明らかにした。

「みずほの報告を鵜呑みにしたのか」(公明党の竹内譲委員)との指摘に対し、麻生太郎財務・金融相は「検査官は銀行の報告体制に関する回答を鵜呑みにしていない。裏付けを検証している」と防戦した。みずほによる問題融資の放置は、金融庁が通常検査の過程で見つけた。ただ、その情報がどこまで上がっていたかの認定は、結果的に誤った。

検査の過程で金融庁は、過去にさかのぼって問題融資の報告書を調べたが、確認の印は担当役員までしかなかった。問題融資について議論するコンプライアンス委員会の2012年度の議事録・資料にも記載がなかった。このため「情報は担当役員止まり」としたみずほの担当者からの報告について、裏付けが確認できたと判断した。

ところが、みずほの社内調査で、2011年度、2010年度の同議事録の資料には、問題融資に関する記載があったことが、行政処分を出した後でわかった。金融庁幹部は「まさか過去に報告されていたことが、(問題融資が存在していた12年度に)報告されていないということにまでは、思いがいたらなかった」と話す。

金融庁は、みずほに対し、誤った報告をした経緯などをあらためて報告するよう命じた上、5日からは再検査に入らざるを得ない事態になった。日本維新の会の田沼隆志委員は「深い検証をするため、検査の体制を見直す議論をしないといけないのではないか」と追及した。

麻生金融相は「深い検証を行うべきではなかったかという批判は、真摯に受け止めなければならない」との認識を表明した。

だが、限られた人員と時間の中で効率的な検査に努めてきた経緯があるだけに、妙案は容易には見つかりそうにない。麻生金融相は「限られた人員の中で、精一杯やるという以外に手はない」と答弁するしかなかった。

とはいえ、何ら対応策を出さないまま、今回の一件を幕引きにすれば、世論の反発を招きかねない。金融庁は実効性のある検査の精度向上という「宿題」を背負うことになりそうだ。

(平田紀之、布施太郎 編集:田巻一彦)

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