九州の超定番「焼豚ラーメン」40年の歩みと魂 サンポー食品のカップ麺を知っていますか?

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そしてふたに掲載された調理例の写真。「1996年版」には、「2018年版」にはないゆで卵やシイタケの姿がある。古川さんは「今じゃ、あり得ないですね」。

現在、カップ麺に表示される調理例については、実際の内容物と同様のものを使用するよう「即席めんの表示に関する公正競争規約施行規則」が定めている。今となっては当たり前のカロリー表示も、1996年版にはない。

厳しい局面も乗り越えてきた。

国内初の狂牛病が確認された2001年、国の指導でスープなどに用いられる「牛エキス」の使用自粛が拡大。サンポー食品も牛エキスを除きながら、味を維持する苦労を重ねた。

そして2011年の東日本大震災では、大事な具の1つだったナルトを製造していた取引先の福島の工場が被災。取引のめどが立たなくなり、泣く泣くコーンに差し替えた。

ナルト復活を求める声は今も少なくないという。ただ、実は硬いナルトは製造過程で袋を破ってしまう恐れがあり、コーンが現在も使われ続けている。

サンポーは違う、ちゃんと「臭い」

環境の変化に応じながら、その味の根幹を守ってきた焼豚ラーメン。「変えないために、少しずつ変わってきたんです」と古川さんは言う。

サンポーの工場は久留米ラーメンを生んだ久留米に近い場所にある。その焼豚ラーメンは、博多より味が濃いめで、麺も少し太めの久留米スタイルだ。スープはコショウがしっかり効いていて、食べ応えがある(写真:qbiz西日本新聞経済電子版)

1978年の発売当時と異なり、今はとんこつ味の即席麺は星の数ほど生産されている。それでもサンポー食品の焼豚ラーメンファンの間で聞かれるのが「サンポーは違う。ちゃんと『臭い』」。

とんこつスープ特有の臭みは、どうやって生まれているのか。「開発者も含めて、サンポーのスタッフは九州人。とんこつラーメンの味を分かっているというのが大きい。地元の人にしか理解できない『いい臭さ』を追求してきた」(古川さん)

左上が1996年、右上が1998年、右下と左下は2018年のパッケージ(写真:qbiz西日本新聞経済電子版)

その肝は、豚から採れるポークエキス。苦みや臭みなど、さまざまな特徴を持つ十数種類のエキスをサンポー流に配合して生まれる粉末スープが、このラーメンに九州の魂を注入している。

即席麺メーカーなどでつくる「日本即席食品工業会」(東京)によると、2017年度に販売された、日本農林規格(JAS)法に基づくJASマークが付いている即席麺は袋麺が265銘柄、カップ麺は1311銘柄に上る。

正確な数は定かではないが、業界では「年間1000種類以上の新商品が出る」と言われている。スーパーやコンビニの棚を、各メーカーの商品が奪い合う――。勝ち残れるのはほんの一握りの「エース」だけだ。

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