「営業主体」のIT企業が潰されかねない理由 ユーザー完結型企業の圧倒的強みとは

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セルフサービスファースト企業は、競争優位性を保ちやすくもあります。こうした企業の製品を最初に使うのは、たいてい小規模な事業者です(起業家や開発者が多いでしょう)。小規模な事業者は、「顧客として取り込めない」「費用対効率が悪い」などと思われ、既存企業からは見落とされがちですが、実際は成長の足掛かりとして大切な存在です。最初の顧客のおかげで、コストを余りかけずに、顧客と良好な関係を築き、口コミによる集客ができるようになります。

小口顧客が売り上げを支えてくれているおかげで、既存企業の収益源を奪いに行くこともできます。口コミのおかげで顧客獲得にコストがかからないことに加えて、顧客との関係性がよく一定層を囲い込めているうえに、サポートコストも安くつくとなれば、既存企業にとっては大口や上級顧客を容赦なく奪われる、手強い競争相手です。これは、ハーバード・ビジネス・スクール教授のクレイトン・クリステンセンが提唱する「破壊的イノベーション」そのものです。既存のビジネスモデルを壊し、業界の秩序を一変させるようなイノベーションをセルフサービスが可能にしています。

ナスダック上位に名を連ねるハイテク企業は

たとえば、アマゾン・ウェブ・サービスやグーグルの「Gスイート」、スクエア、アドビは、それぞれ異なる分野でサービスを提供していますが、画期的なセルフサービス型サービスであり、同じ成長曲線を描いています。

話を私の仮説に戻しましょう。ナスダックの上位銘柄のリスト(2018年4月中旬時点)からハイテク企業を抜き出してみましょう。時価総額が500億ドル以上の企業には、アルファベット、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブック、アドビ、ブッキング、ペイパル、バイドゥ(百度)、アリババ(阿里巴巴集団)、イントゥイットが名を連ねています。

これらの企業はタフかつパワフルで、成長スピードの早いセルフサービス型製品を提供しています。どの企業もセルフサービスファーストだといえるでしょう。実際たいていの企業では、収益柱はセルフサービス製品で、営業やパートナーシップの収益への影響は存在感に欠けています。

ただ、私の説明を聞いて、セルフサービスファーストを簡単だと思わないでほしいのです。決して、簡単ではありません。セルフサービス型製品を作れば顧客がついてくる、という極意はありません。優良な製品があれば、優良な企業になれるわけではありません。製品には、計画的でしっかりとしたマーケティングや市場開拓戦略が必要です。

営業主体の事業は、予測が立てやすいビジネスモデルだともいえます。一方、セルフサービスファーストは、リスクが高く、スケールしにくいビジネスモデルですが、すべてがうまいところに落ち着けば、Tシーツ(イントゥイットが3.4億ドルで買収)やトレロ(アトラシアンが4.25億ドルで買収)のような成功が望めます。もっと上手く行けば、長い歴史を築く企業になるでしょう。

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