《MRI環境講座》第5回 新たな温暖化対策として期待が集まる「カーボン・オフセット」とは?

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
《MRI環境講座》第5回 新たな温暖化対策として期待が集まる「カーボン・オフセット」とは?

「カーボン・オフセット付き年賀はがき」(日本郵政公社)、「カーボン・オフセット付き乗用車」(日産自動車など)、「CO2ゼロ旅行」(JTBなど)、「カーボン・オフセット付き住宅ローン」(スルガ銀行など)、「カーボン・オフセットイベント」(ワールドカップ、G8環境大臣会合など)等々、今やあらゆる商品やサービスに、「カーボン・オフセット」という言葉が載せられているのを見かけるようになった。世は、カーボン・オフセット・ブームの様相だ。

■カーボン・オフセット・ブームの到来

 カーボン・オフセットとは、読んで字のまま、「カーボン=炭素」の発生量を何らかの方法により、「オフセット=相殺」するという考え方である。環境省作成のガイドラインには、「自らの温室効果ガスの排出量を認識し、主体的にこれを削減する努力を行うとともに、削減が困難な部分の排出量について、他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量等を購入すること又は他の場所で排出削減・吸収を実現するプロジェクトや活動を実施すること等により、その排出量の全部又は一部を埋め合わせること」(*1)と定義されている。

 やや分かりにくい文面だが、これを噛み砕くと、個人にせよ企業など組織にせよ、1)自らの排出する温室効果ガス排出量の削減努力をする一方、2)その努力では削減しきれない排出量を把握し、3)クリーンエネルギー事業の実施や植林などへの投資を通じて自らの排出分を相殺すること、となる。

 地球温暖化の主な原因である二酸化炭素は、化石燃料を消費する限り、必ず発生する。現在の社会システムにおいて、自動車や飛行機に乗ったり、エアコンを使ったりする限り、この排出は止められない。自家用車の運転を控えて公共交通機関を活用したり、エアコンの設定温度を上げるなどのこまめな省エネ活動に励んだりすれば、排出量をある程度までは低減できるが、全くのゼロにすることは、ほぼ不可能である。そこで、どうしても排出してしまう二酸化炭素量を、他の所での削減によって相殺しようというのが、カーボン・オフセットの基本的な考え方である。

 カーボン・オフセットの動きは、イギリスから始まった。日本国内では1年ほど前から、この言葉が新聞・雑誌などのメディアを賑わすようになり、最近になって前述のような派生商品、サービスが消費者の目に多く触れるようになってきた。これは、温暖化対策に寄与する施策として政府も期待している動向だが、その一方で、「何か信用できない」と感じている人も少なくないのではないだろうか。そこで今回、次回の2回は、このカーボン・オフセットについて、政府の制度設計にも関わっている立場として、色々な角度から見てみたい。
*1環境省「カーボン・オフセットの取組に係る信頼性構築のための情報提供ガイドライン(案)」H20.9.25より。
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事